「越前の狂犬」と呼ばれる男――『くるい咲き 越前狂乱』著者新刊エッセイ 大塚卓嗣

レビュー

4
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くるい咲き

『くるい咲き』

著者
大塚卓嗣 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334912086
発売日
2018/02/14
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「越前の狂犬」と呼ばれる男

[レビュアー] 大塚卓嗣(作家)

 富田長繁(とだながしげ)。

 という、とんでもない戦国武将がいたのです。

 どれだけスゴい人かは、とりあえず手元のスマホなどで検索してみれば、よくわかると思います。

 ……はい、ヒドいですね。

 主君を裏切ったり、合戦をしかけたり、謀殺したりという、悪事のフルコース。死に方も最悪で(ぜひ検索してみてください)、ネット界隈でつけられたアダ名が「越前の狂犬」と、まったくエラいことになっています。

 たまりません。

 私は、このような無理、無茶、無謀を極めた「時代の徒花(あだばな)」みたいな人物が大好きです。

 自分が書かなければ誰が書くんだという、ある種の使命感に突き動かされながら、私は執筆を始めました。

 しかしながら、これを形にするまでは、ずいぶんと悩まされました。

 まず、史料らしい史料がない。軍記ものでは、越前朝倉家の事跡を書いた『越州軍記』がまとまっていますが、なかなか内容の裏付けがとれない。織田信長の一代記である『信長公記』にも若干の記述がありますが、ホントに少し。

 そして、研究資料もわずかで、地方史の類をあたってみても、その存在をほとんど無視されてしまっています。朝倉家の研究の中に、やっと名前を見かけるくらいです。

 それでも、どうにか頭をひねり、工夫を重ね、ようやく一本のスジとなりました。

 このたび、『くるい咲き 越前狂乱』として上梓されます。興味のある方は、ぜひとも御覧になってください。

 歴史小説には、あまりない「一人称視点」というのもポイントでしょうか。とにかく、色々と珍しい一冊になっていると思います。

光文社 小説宝石
2018年3月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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