【聞きたい。】坂爪真吾さん 『孤独とセックス』 いかに生と性に向き合うか
[文] 産経新聞社
坂爪さんは新潟高校時代、根拠もなく自分は特別な存在と思い込み、すべての人間関係を断ち切って東大に現役合格することだけを目指していた。ところが土壇場になって、不合格となれば自尊心がズタズタになると恐れ、それを回避しようとセンター試験で白紙答案を提出してしまう。
本書は、自殺とジョルジュ・バタイユのいう「小さな死」(生殖を目的としない性行為)にひかれた坂爪さんが、ネット時代を生きる18歳前後の男子が、自閉から抜け出して他者や社会と再びつながるために、いかに自らの生と性に向き合うべきかを、11のテーマに分けてつづったものだ。
執筆にあたって、坂爪さんはフィールドワークと並行して、高校時代の日記を読み返した。
「18歳の男子に抽象論をぶつけても届くとは思えません。書き手の体験を赤裸々につづってはじめて届くと考えました。自分の日記を読み返すのは拷問に近い体験でした」
このように書かれた本書は、「俺の時代はこうだった」といった、年長者が陥りやすいノスタルジーとは無縁。自分を反面教師としてさらしながら、現在進行形のリアルな「いま」をベースに処方箋を模索する。方法論は、東大の上野千鶴子ゼミと首都大学東京の宮台真司ゼミで身につけた。
年長者は「ネットから離れる時間を作れ」とアドバイスするが、ネットはすでに完全に現実の一部になっており、ネットの方が質量ともに現実よりはるかに豊かなコンテンツを持っている。そこから離れるのはもはや無理なのだ。こうした認識のないアドバイスは何の力も持たない。坂爪さんは、徹底的に孤独の底に沈むべきだという。
「もちろん沈みっぱなしという危険はありますが、孤独という通過儀礼をクリアしてこそ自分自身とつながることができる。他者や社会とつながることができるのはそれからです」(扶桑社新書・820円+税)
桑原聡
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【プロフィル】坂爪真吾
さかつめ・しんご 昭和56年、新潟市生まれ。東京大学文学部卒。社会的な切り口で現代の性の問題に取り組む一般社団法人「ホワイトハンズ」代表理事。