減点要因となる「12の超重大ミス」とは? 小論文試験合格のために覚えておきたいこと

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減点要因となる「12の超重大ミス」とは? 小論文試験合格のために覚えておきたいこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

公務員試験、教員試験、大学・大学院入試、昇進試験、病院採用試験、マスコミ採用試験などなど、世の中にはさまざまな小論文試験があります。そして、出題形式や問題の傾向、問われる内容もさまざま。

しかし、「採用者がどこに着目し、なにを考えて評価を下しているか?」という点に大差はなく、「文章で選抜しようとすれば、このあたりに落ち着く」という一定の評価基準があるもの。『全試験対応! 直前でも一発合格! 落とされない小論文』(今道琢也著、ダイヤモンド社)の著者は、そう主張しています。

その一方、受験生の悩みは次の3つに集約されるのだとか。

・「小論文試験はどうやって評価が決まるのか?」

・「自分の書いた答案は、どこが悪いのか?」

・「どうすれば、合格答案が書けるようになるのか?」

(「はじめに すべての小論文試験に共通する『3つの評価ポイント』」より)

答えが明確な数学などとは違って採点基準がはっきりしないため、多くの受験生が小論文試験について、「すべてが闇の中」というような気持ちを持っているということ。

ちなみにインターネット上の小論文指導塾「ウェブ小論文塾」代表である著者は、あらゆる試験に共通した「12の超重大ミス」があると指摘しています。

やりがち順 減点要因ランキング12

ワースト第1位 問題文の指示に正しく答えていない


ワースト第2位 「具体的な言葉」で書けていない


ワースト第3位 「資料」を正しく扱っていない


ワースト第4位 要約が「本文の切り貼り」になっている


ワースト第5位 課題文を無視して自分の意見を書く


ワースト第6位 課題文の趣旨をそのままなぞって書く


ワースト第7位 ムダな言葉が多い


ワースト第8位 解答のバランスが悪い


ワースト第9位 消極的な表現で印象を落とす


ワースト第10位 課題解決型の問題を「一点突破」で押し切る


ワースト第11位 話の流れが整理されていない


ワースト第12位 事前に準備した筋書きやキーワードを書く

(「はじめに すべての小論文試験に共通する『3つの評価ポイント』」より)

ということは、これら12のミスを防ぐ方法さえ理解していれば、どんな小論文試験においても効率的に合格ラインに到達できるということでもあるはず。そこで本書では、「なにが小論文の評価を分けているのか?」「自分の答案をなおすにはどうすればよいか?」について解説しているわけです。

きょうは、第1章「10分でわかる! 小論文の超基本」から、その「12の重大ミス」を克服する前に把握しておくべきいくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

「作文」と「小論文」はなにがどう違うのか?

著者は、小論文の書き方を学ぶ人から「小論文は、作文となにが違うのですか?」と質問されることがあるそうですが、両者の違いはどこにあるのでしょうか?

作文とは「文を作る」という文字からもわかるとおり、自由な発想で好きなように書いてよい文章。一方の小論文は、「論じること」が目的。なんらかの問題提起や主張をして、自分の考えを筋道立てて説明することが求められる文章だというわけです。

そのことをわかりやすく示すために。著者は「山」というテーマを用い、作文と小論文の違いを明らかにしています。

作文

私は登山が大好きだ。どんなに嫌なことがあっても、山に登ると無心になれる。街の喧騒を離れ、大自然の中を歩いていると、不思議に気持ちが落ち着いてくる。日常の雑事や煩わしい人間関係を忘れることができる。また、山に登る人たちの間には一種の連帯感がある。すれ違えば道を譲り合うし、「こんにちは」「頂上までもう少しですよ」と声を掛け合う。都会では隣人の顔も知らないのが普通だが、山ではすれ違うだけの人とでもささやかな交流がある。私には、それがとても心地よい。(18ページより)

小論文

近年、中高年の間で山歩きがブームとなり、登山コースでは、高齢者も含めた多くの人で賑わうようになった。一方で、山の厳しさを十分に知らないまま安易な計画や装備で登山に臨み、遭難するケースが相次いでいる。登山者に対する十分な注意喚起が急務だ。そのために、まずはツアーを組む旅行代理店が、参加者に対して必要な装備、服装などについて十分に説明しておくべきだ。また、環境省・自治体などが各登山コースの難易度、所要時間などについて情報を登山者に提供し、自分に合ったコースを選ぶよう呼びかける必要がある。(18ページより)

このように、作文は、主張がなかったとしても、ただ自分の思いを書き連ねればよい文章。しかし小論文は、主張したいことが明確になっていなければならないわけです。

ただし小規模な自治体の公務員試験では、「作文試験」と銘打っておきながら、問題文が「循環型社会をどのように実現していくべきか述べなさい」となっているなど、実際は明らかに「論文」を求めているケースもあるのだそうです。そういう場合は問題文をよく読み、「作文試験」となっていても、中身は「論文」として書かなければならないということ。(18ページより)

「です・ます」調と「だ・である」調、どちらの書き方がよいか?

小論文試験は、「だ・である」の文体で書くべきだと著者。なぜなら正式な学術論文は、「だ・である」で書くものだから。小論文も論文の一種なので、これに習うべきだということです。「です・ます」調はていねいですが、自分の主張を、説得力を持って伝えるための文章としては印象が弱くなるといいます。

履歴書、エントリーシート、志望理由書、面接カードなどは、自分が描きやすい文体で書いてもOK。とはいえ「です・ます」調には、必然的に字数が増えるというデメリットも。この種の書類は記入欄が小さいことも多いので、限られたスペースのなかに収めるという意味でも、「だ・である」の文体を著者は勧めています。(24ページより)

「〜字以内」「〜字以上、〜字以内」「〜字程度」、それぞれ何字書けばよいか?

字数を指定する指示文の表現は、おもに「〜字以内」「〜字以上、〜字以内」「〜字程度」の3種。これらの表現が、受験者を「何字書けばいいの?」と迷わせるわけです。そこで著者は、(絶対的な基準こそないものの)800字をベースに、それぞれどれくらい書けばよいのかの目安を示しています。

「800字以内」→最低640字。720字以上が理想

800字以内の場合は、少なくとも上限字数の8割は書き、9割以上を目指すべきだといいます。7割を切ると明らかに印象が悪くなり、さらに短いと減点、最悪の場合は採点対象外となる可能性もあるのだとか。

「800字以内」の字数指定があるということは、「時間内に800字程度で文章をまとめる力が見たい」という採点者の意図が込められているということ。もちろん話を無駄に引き延ばすのは論外ですが、上限に近い字数で、中身のある議論を展開できる力が求められているということです。

「500字以上800字以内」→最低640字。720字以上が理想

「800字以内」と考え方は同じ。ただし「500字以上」と下限を設定されると、油断する成果500字を少し超えたところで終える人がいるのだそうです。ところが制限字数ギリギリの答案は、意欲が疑われ、評価を下げる可能性も。内容が飛び抜けて優れていたなら下限ギリギリでもよいかもしれませんが、そんな答案はまず見かけないと著者はいいます。書きはじめる前に上限近くの字数を想定し、十分な素材を準備することが必要だということです。

「800字程度」→720字〜880字

この場合は、800字のプラスマイナス1割の範囲に収めることが必要。ただし「程度」という曖昧な指示なので、プラスマイナス1割から多少の過不足があっても許容されるといいます。

(以上25ページより)

こうした基本を確認したうえで、以後は「12の超重大ミス」についての具体的な解説が展開されます。また「頻出テーマ」を厳選し、問題の背景や解決すべき課題、取り組むべき対策が総合的にまとめられているなど、とても実践的な内容。小論文試験の合格を目指す人は、ぜひともチェックしておきたいところです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年2月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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