「会社」を売るのと「トマト」を売るのは同じ? 起業するなら知っておきたいこと

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

サクッと起業してサクッと売却する

『サクッと起業してサクッと売却する』

著者
正田圭 [著]
出版社
CCCメディアハウス
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784484182025
発売日
2018/01/31
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「会社」を売るのと「トマト」を売るのは同じ? 起業するなら知っておきたいこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

僕はいわゆるシリアルアントレプレナー(連続起業家)だ。連続的に起業するとはどういうことかというと、会社を立ち上げて、売却して、また会社をつくって売却するということを飽きもせず延々と繰り返す人のことである。15歳の頃から、僕はこの連続的に起業することを生業にしている。(「はじめに 会社を売るのもトマトを売るのも同じ」より)

こう語るのは、『サクッと起業してサクッと売却する 就職でもなく自営業でもない新しい働き方』(正田 圭著、CCCメディアハウス)の著者。印象的なのは、会社を売るのはトマトを売るのと同じで、つまりはただの「ものを売る」という行為だと主張している点です。

本書の目的は、「会社を売る」という行動のメリットを伝え、理解してもらうことにあるのだといいます。さらに言えば、「起業して会社をエグジット(売却)する」という「文化」を、日本でもっと普及させたいという思いもあるのだとか。

なぜなら「会社を売る」という行為は、人生を想像以上に豊かにすることにつながっていくから。人生を豊かにするのは「たかがお金」で、だからこそ効率よく手に入れる方法を真剣に模索すべきだというのです。

そして著者は、起業が崇高なものであるような風潮にも疑問を感じるのだといいます。本来、起業とは、まず自分が幸せになるためにするものだということ。

自分で起業すれば、自分のわからない要素を取り入れる必要がない。自分がわかっていることを商売にすればいい。

そして、会社を軌道に乗せ、うまくいったら適切なタイミングで売却する。そう、M&Aするのだ。

そろそろ、仕掛けられるお金儲けから脱却しよう。自分が「仕掛ける側」になったほうが確実に決まってる。(「はじめに 会社を売るのもトマトを売るのも同じ」より)

とはいえ、起業には不安がつきもの。そこできょうは本書の第3章「起業のFAQ」から、いくつかを抜き出してみることにしましょう。起業に関する疑問に、著者が答えている章です。

起業家になったら叩かれるって本当ですか?

もともと著者はSNSが好きではなかったそうですが、それでも経営者にSNSが必須なものとなってきていることを認めています。

面識のない人と「お会いしましょう」となると、みんな「会社名 名前」や「会社名 社長」で検索して、検索順位が上位のいくつかのサイトにはパッと目を通してくる。

そこで何も出ていないと、なんかこの人大丈夫かな…となってしまうのだ。

このように、SNSアカウントを作って情報発信したり、さまざまなメディアの取材を受けたりすることは、起業すると余儀なくされる。そして、そういうことを繰り返すと、当然のことながら露出は増える。

結果、伸びているように思われ、目立つ起業家はどこかのタイミングで間違いなく叩かれる。

もちろん、叩かれるばかりではなく、もてはやされることもある。

しかし、もてはやされるばかりの起業家はいない。どこかで必ず叩かれる。しかも、必要以上に叩かれる。(122ページより)

では、なぜ起業家は叩かれるのでしょうか? 著者によればそれは、起業家が「夢を実現させる方法論」を身につけているから。多くの人は心のどこかで「夢を実現させる方法論」を持っている人を認めたくないから、それを確立させている人に対して嫌悪感を抱くということ。

だからこそ、そんな人たちは「騒がせておけばよい」のだと著者はいいます。たしかに起業する以上は、そのくらいどっしり構えておく必要があるのかもしれません。(121ページより)

借金で周りに迷惑がかからないでしょうか?

事業に失敗して莫大な借金を背負うことを心配している人は、決して少なくないはず。会社を潰したりしたら、自己破産して生きていけないのではないか、家族が路頭に迷ってしまうのではないか、厳しい督促によってメンタルを病んでしまうのではないかなど、さまざまな心配をしてしまうわけです。

しかし、こうしたリスクのほとんどは考え過ぎだ。事業に失敗しても命まで取られるわけではない。仮に借金があったとしても、人は生きていける。数カ月間は辛い時期が続くかもしれないが、それも永遠には続かない。(125ページより)

返せなくなったら自己破産して社会的信用がゼロになると思っている人もいるでしょうが、そこまで失敗しても、昔と違ってひどい目には遭わないというのです。

銀行借り入れをした場合はたいてい保証協会がつくものなので、自分に返済能力がなくなったら協会が保証してくれるもの。その代わり5年の返済期間が20年に延びたり、毎月20万円の返済金額が2万円に下げられたりして、保証協会に返し続けていくことになるだけだというのです。

もちろん、その間は自由にお金を借りることは不可能。しかし実際のところ、生きてはいけるということ。そのため、運悪く借金を背負ってしまったら、ゆっくり返していけばいいのだそうです。

とくにベンチャー企業は、売上も少ないし、金融機関からの借り入れはむしろできないことの方が多い。金融機関からお金を貸してもらえないから、仕方なく自分の株を希薄化させてベンチャーキャピタルから調達するのだ。

出資を受ける際に、「死ぬ気でがんばりますが、失敗したらゼロになってしまうお金です。失敗したときはすみません。その節は、次に起業するときの資金をまた出してください!」と正直に言っておけばよいのではないだろうか。(126ページより)

それはなかなか難しそうでもありますが、「絶対に返せるお金です」「死んでも返します」などと言ってしまうからおかしくなるのだということは事実かもしれません。(125ページより)

「10億あれば一生安泰」だと聞きましたが、10億円あれば一生遊んで暮らせますか?

この問いに対して著者は、「10億あれば一生安泰」は大きな嘘だと断言しています。

お金は何かしらを達成するための「手段」である。お金そのものが何かをもたらしてくれることはない。お金を儲けた人は、それを活用してチャレンジしたり、大きな投資をしたりする。お金はそのためにある。(139ページより)

「パーキンソンの法則」でもいわれるように、支出は収入の額に達するまで膨張するもの。お金は持っていたらあるだけ使ってしまうし、なくなってしまう可能性もあるわけです。つまり、「このお金さえあれば一生困らない」などという魔法のような話はないということ。そのため、お金はなくなるものであるということを肝に命じておいてほしいと著者は記しています。(138ページより

起業よりも仮想通貨のほうが儲かるのではないですか?

最近は、ビットコインをはじめとする仮想通貨のニュースが絶えません。「1週間で倍になった」とか、「何年で何十倍になった」というような話で、一喜一憂している人たちもよく見かけます。

しかし、こうした風潮に著者は賛同しません。たしかに、7年前にビットコインを10万円買っていたなら、いまは200億万円になっている可能性もないとはいえないでしょう。けれども100万円で起業して7年後に一部上場していたら、1000億円になっているかもしれない。上昇率は、起業の方が上ともいえるというのです。

ビットコインは何もしなくても、寝ていても値上がりしたなんて言う人もいるが、人間、寝て待つだけほど難しいことはない。すぐ利益確定のため換金したくなったり、他の仮想通貨に乗り換えたりしたくなるのが人間だ。自分がプレイヤーとなって熱中していたほうが、よほど迷うことも少ないと思う。また、自分で作った会社は自分が一番理解しているだろうから、そういう意味でも投資の理にはかなっている。

よって、僕は仮想通貨よりも起業を勧める。(140ページより)

なお、仮想通貨とどのようにつきあっていけばよいかと聞かれることが多いという著者は、ここで自身の考えを明らかにしています。

仮想通貨が通貨として市民権を得ているのであれば、流通比率に応じて持つのが正しいということ。為替のように、それ単体で利益を生み出さないものは、それで儲けようとしてもただの投機にしかならないわけです。

世界中の通貨に対する仮想通貨の流動比率が5%なのだとすれば、自身の全財産が100万円なら5万円を仮想通貨にしておけばよいというのです。金儲けは一生つきあっていく技術だからこそ、自分の力でコントロールすることが大切だという考え方です。(139ページより)

さまざまな局面を乗り越えてきた人物だけあり、著者の主張からは「強さ」を感じ取ることができます。そのぶん、まったく同じことをするのは難しいかもしれませんが、少なくともヒントを引き出すことはできるのではないかと感じました。興味のある方は、手にとってみてはいかがでしょうか?

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年3月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加