【聞きたい。】山中智省さん 『「ドラゴンマガジン」創刊物語』

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ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語

『ライトノベル史入門  『ドラゴンマガジン』創刊物語』

著者
山中智省 [著]
出版社
勉誠出版
ジャンル
文学/日本文学総記
ISBN
9784585291497
発売日
2018/01/31
価格
1,944円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

【聞きたい。】山中智省さん 『「ドラゴンマガジン」創刊物語』

[レビュアー] 磨井慎吾


山中智省さん

 ■作り手の立場から見た出版史

 書店で少なからぬ棚を占める一大書籍ジャンルに成長したライトノベル。その興隆期に大きな役割を果たしたのが、昭和63年に創刊され1月に30周年を迎えたKADOKAWA(富士見書房ブランド)の老舗ライトノベル雑誌「ドラゴンマガジン」だ。本書は、同誌についての初の本格的研究書となる。

 「ライトノベル発展の流れを追う上で、定点観測できる資料として同誌をはじめとする雑誌に注目するようになった」と語るのは、著者の山中智省・目白大専任講師。ライトノベルはここ10年ほどの間に、アカデミズムの場でも文学研究やサブカルチャー研究などの流れを受け注目されるようになったが、個別作品や文庫レーベルの研究が多く、雑誌はあまり研究対象になってこなかったという。

 本書は同誌草創期を軸に、当時の資料や関係者インタビューにより同誌創刊の背景や、今日のライトノベルというジャンルが確立される過程を描く。

 研究を通じて見えてきたのは、同誌がアニメや漫画には幼少時から親しんでいるが活字には距離がある“メディアミックス世代”の中高生を想定し、アニメ誌などを参考にして従来の小説誌とは異なる手法で作品世界やキャラクターを中心に特集を組むビジュアル重視の誌面作りを行い、読者を活字の世界へと引き込んでいった構図だ。

 「従来は読者やファンといった受容者の立場から見たライトノベルの定義や歴史の語りが多かったが、一方で作り手側の編集者や作家の立場からはどう見えていたのか。そちら側の言説や資料を確認すれば、より立体的にライトノベルの歴史がとらえられるはず」

 「若者の活字離れ」は、30年前の時点で既に言われていた。従来の手法が通用しなくなった状況で、当時の出版人たちはどう対応したか。一つの出版史としても面白い。(勉誠出版・1800円+税)

 磨井慎吾

   ◇

【プロフィル】山中智省

 やまなか・ともみ 昭和60年、静岡県生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科言語文化系教育専攻修士課程修了。専門は日本近現代文学、ライトノベル研究。著書に『ライトノベルよ、どこへいく』など。

産経新聞
2018年3月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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