単なるモノの片付けではない「思考の断捨離」とは?

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人生を変える断捨離

『人生を変える断捨離』

著者
やましたひでこ [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478104569
発売日
2018/02/23
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

単なるモノの片付けではない「思考の断捨離」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人生を変える断捨離』(やましたひでこ著、ダイヤモンド社)の著者は、「断捨離」の提唱者。いまや断捨離の認知度はすっかり上がりましたが、だからこそ気になることがあるのだそうです。

それは、「断捨離したらモノが片づいてスッキリする」という理解だけで終わってしまう人が多いという事実。しかし、モノの片づけはあくまで断捨離の入り口でしかないため、「とても残念で、もったいない」という気持ちが湧いてくるというのです。

クローゼットや食器棚や冷蔵庫に詰まっている不要なモノ、生活空間に乱雑に堆積しているガラクタとは、自分にとって不要な観念や、自分を責めたり否定したりするマイナスの思考・感情の証拠品でもあります。ですから、そういったモノを手放すことは、自分自身を、自分の人生を解放することに繋がります。

その結果、私たちは、「高い視点・広い視野・深い洞察」、つまり俯瞰的な思考を獲得することができます。本当の意味で「自在=あるがままでいられて自然」な状態で生きられるのです。そして、そこには“ごきげん”なあなたがきっといるはず。(中略)「断捨離」が目指すのは、こうした「ごきげんな生き方」です。(「はじめに 〜断捨離とは、ただ捨てることにあらず〜」より)

つまり断捨離とは、単なるモノの片づけではなく、そこには人生を大きくブラッシュアップする力があると著者は主張するのです。

そのような考え方に基づいて書かれた本書のなかから、きょうは第2章「これが断捨離のメカニズム」にある「思考の断捨離」に焦点を当ててみたいと思います。

思考の断捨離1 現状を認識する

「断捨離をしよう」と決めたとき、私たちが真っ先にすべきことは、押し入れや戸棚など、ふだんは閉め切っていて“見えない収納”をすべて開け放つことだと著者は言います。

そのとき大切なのは、ただ表から中身を確認するだけでなく、そこに収納されているモノの総量をきちんと認識すること。それを把握しないまま取りかかろうとしても、想定以上のモノの量に徒労感が募るだけだということです。

モノの現状認識をする必要があるのは、私たちには本来「見られたくないものを見ない」傾向があるから。いいかえれば、自分たちがいかにモノにあふれた状態で暮らしているかを認識できていないということ。そのため、住まいのモノの量、モノにあふれた現状を見定めるべきだという考え方です。

なお断捨離では、住まいの現状を3段階でチェックするのだそうです。

・ 収納空間に無理なく収まる量がたまたま「散らかっている」だけなのか?

・ もはや収納空間に収まりきらずにモノが「はみ出し、溢れている」のか?

・ すでに長い年月の間にモノが「堆積している」のか?

(62ページより)

そして“量”の現状を認識できたら、次にすべきは、居住空間の“質”がどういうレベルにあるのかを見定めること。

住まいからゴミ・ガラクタが取り除かれた状態が「境界線」だとするなら、それより下のレベルは「モノの海で溺れている」ようなもの。ところが私たちの住まいのほとんどは、境界線より下の状態。そこで、とにかく一度、ゴミやガラクタが溜まった状態から脱出しようと著者は訴えているのです。(60ページより)

思考の断捨離2 自己否定をやめる

著者によれば、特に女性に多いのが、自分を「片付けられないダメな女」と決めつけ、自罰的な思考回路にはまり込んでしまうケース。“片づけ=できて当然の家事労働”と認識しているため、「片づけられる」「片づけられない」という能力の問題として捉えてしまうというのです。

一方、男性の多くは、ニュートラルに「片づかない」と捉えているのだとか。そこには、個人的な感情が入らないということです。

つまり多くの女性は、ただでさえ「片づかない現実」にダメージを受けているのに、そこに「片づけられない私」という自罰性、自虐性も加わるため、なおさら大きなダメージを受けてしまうのだということ。

また、キャリアの高い女性に多いのが、完璧主義に陥っているケースだといいます。

彼女たちは、外でバリバリ仕事をこなしているのに、住まいはグチャグチャというギャップに苦しんでいます。外と同じように家の中も完璧にキレイにしておきたいのに、できない。

そのギャップが大きければ大きいほど、

「どうにかしなくては…」

「このままではいけない…」

と自分を責める傾向がより強くなってしまいます。

こうした自罰的な思考傾向に気づいて、自己否定をやめることも、思考の断捨離です。(66ページより)

そもそも私たちは、こんなにもモノや情報であふれた社会に生きているもの。しかも、そこにモノとの関わり方を示す的確なガイドラインがなければ、当然のことながらモノは増えていく一方。でも、それが決して自分だけの責任ではないということも、認識しておく必要があるというのです。(65ページより)

思考の断捨離3 住まいの明確なビジョンを描く

モノの多さに悩まされている人は、目の前のモノを「どうにかしたい」一心から、「片づけなきゃ」という強迫観念にとらわれてしまうものだといいます。そしてその結果、片づけ術や整理術の本を買いあさっては実践してみたりするわけです。

ところが多くの場合は長続きせず、また別の本を買い…というようなことを繰り返してしまうことに。それは視野がとても狭くなっている状態なので、一度立ち止まって考えてみることを著者は勧めています。

そもそも、「片づけをすること」が私たちの目的でしょうか?(67ページより)

決してそうではなく、私たちが本当に手に入れたいのは、「自分が心地よくいられる住空間」であるはず。だとすれば、「片づけ」はそのための手段にすぎないわけです。

そこで、優先すべきは「片づいたあとの住まいでどんな暮らしをしたいのか」という、自分自身のビジョンを明確にすることだといいます。

・ 北欧系の雑貨や白木の家具を配したシンプルな空間

・ アジアンテイストの布や籐の家具に囲まれたエスニックな空間

・ 仕事を優先するための機能的でスタイリッシュな空間

(68ページより)

たとえばこのように、本来は人の数だけ「憧れの居住空間」のイメージがあるはず。ところが残念なことに、多くの人はそうしたビジョンが不明瞭な状態にあるというのです。

そこで、そういう場合は「モノを手放す」行動を繰り返しながら、モノを通じて自分のビジョンを見つめなおし、住まいの明確な形を思い描いてみることが大切。すると、おぼろげながら、

「そういえば、私はゆったりした空間に憧れていた」

「大切にしたいのは、効率より家族との関係性だった」

「住まいの理想と現実がかけ離れていることに、なんの問題意識も持っていなかった」

(68ページより)

など、「どう暮らしたいか」という原点に立ち戻ることができ、それが断捨離を実行するうえでの原動力にもなっていくのだそうです。(67ページより)

断捨離とは「出す」美学なのだと著者は主張しています。「入れたら、出る」「出るから、入る」「そして、出す」、こうしたシンプルなメカニズムが、

・ 人生を左右する

・ “人生の新陳代謝”を向上させる

・ 本来の生き方を取り戻して、さらなる飛躍を促す

(「はじめに 〜断捨離とは、ただ捨てることにあらず〜」より)

といったパワーを持っているというのです。それは、私たちが抱き続けている“モノに対する価値観”に揺さぶりをかけること。そうすることで行動を促し、暮らしを新陳代謝させ、人生に変容を呼び起こすことなのだといいます。そうした断捨離の本質を理解するために、読んでみる価値はありそうです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年3月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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