「自己肯定力」を上げる瞑想法とは?

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一瞬で自己肯定を上げる瞑想法

『一瞬で自己肯定を上げる瞑想法』

著者
綿本 彰 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784040696331
発売日
2018/02/02
価格
1,485円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「自己肯定力」を上げる瞑想法とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

生きていれば誰でも疲れを感じるもので、それは生きている証。とはいえ多くの人は、「現代人特有の疲れ方」をしている可能性も。だとすれば、いますぐにでも脳の休息、心の休息が必要だということになるでしょう。

そして、その休息を助けてくれるのが、『一瞬で自己肯定を上げる瞑想法』(綿本 彰著、KADOKAWA)のテーマである「瞑想」なのだそうです。

瞑想とは、今この瞬間、目の前にある感覚にのみ意識を向け、意識したものを否定せず、ありのまま感じておく心の休息法です。(「はじめに」より)

それができれば不思議なくらいに心が満たされ、穏やかな気持ちになってくるというのです。たとえそれがネガティブな感情であったとしても、“その感情”があること自体を肯定すると、心が楽になってネガティブな感覚が薄れていき、自分に対しても周囲に対しても肯定的な気持ちを育みやすくなるということ。

マインドフルネスの考え方にとても似ていますが、瞑想やマインドフルネスがブームになっているのは、漠然とした苦しみにじわりと蝕まれている現代人にこそ、それらが必要だから。日本ヨーガ瞑想協会会長であり、1994年以来の指導実績を持つ著者はそう分析しています。

瞑想は、やる気と技術だけでは深まりません。私たちが現代を生きる上で失ってきたもの、つまり目の前の自然をありのまま受け入れることだったり、自分の力だけで生きているわけではないという感覚を持つことだったり、そう言った感覚を取り戻すためのステップが現代人には必要だと、私自身が瞑想を深める上で強く感じています。

本書では、そんな現代人が無理なく瞑想を深め、瞑想の恩恵を受けてより快適な生活を過ごせるよう、瞑想のテクニックだけでなく、瞑想を深める際に不可欠な「考え方」や「物事の捉え方」についてもバランス良くまとめました。(「はじめに」より)

きょうは、そんな本書において重要な意味を持つ「自己肯定力」に焦点を当てた2「自己肯定力を高める心のレッスン」から、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。

自己肯定の大切さ

脳を休めるうえで、そして瞑想を深めるうえで最大のカギとなるのは「ありのままを肯定する」ことだと著者はいいます。ところが簡単そうに思えて、それはなかなか実践するのが難しいものでもあります。

気持ちの切り替えがうまくいかないことから、私たちはつい、過ぎ去ったことに悩み、まだ起こりもしないことを憂いてしまうわけです。その結果、目の前のものごとに集中できなくなり、それがまた自己否定や脳の疲れに拍車をかけてしまうことになるということ。

しかし、そんな悪循環から抜け出すためのカギとなるのが、「ありのままの自分」を肯定すること、すなわち自己肯定だというのです。

自己肯定感を持てないでいると、自分の弱い部分や醜い部分を誰かに見透かされるのではないかと未来に怯え、なけなしの自尊心を傷つけられた過去にいつまでも傷つき、それが怒りへと変貌して「ありのまま」からほど遠い状態に陥ることに。

でも自己肯定感が持てると、自分の弱い部分も醜い部分を認めることが可能になり、「それを含めて自分なんだ」という感覚が育まれ、穏やかな気持ちで日々を過ごしやすくなるのだといいます。

自分の弱い部分を隠そうとせず、それを見透かされることに怯える必要もなく、たとえ指摘されても傷跡は小さく、癒しやすくなるということ。

傷つきにくくなると当然ながら、誰かを恨むことも減り、他者肯定への芽も育みやすくなることでしょう。簡単なことで、ありのままの自分を肯定できれば、ありのままの他者をも肯定しやすくなり、ひいてはありのままのすべてを肯定しやすくなるということ。

それ以前の話として、そもそもこの世に生まれてきた時点で唯一確かなこと。

それは、死ぬまで自分自身との付き合いが続くということです。そんな自分といい付き合いができるようになれば、どれほど生きるということが楽になるでしょうか。(73ページより)

つまり、「ありのままの自分を認めること」は、生きるうえでのスタートラインになるという考え方です。(74ページより)

自己肯定の第一歩:自分の気持ちを肯定する

著者によれば、自己肯定の第一歩は、いま抱いている自分の「気持ち」に気づき、それを肯定すること。クヨクヨしたり、イライラしたり、なにかに怯えたり、寂しくなったり…といった状態から抜け出すためには、なによりもまず、そんな自分を責めないことが大切だというのです。

無理に気持ちを切り替えようとせず、無理に前に進もうとしないことが自己肯定の第一歩なのです。(76ページより)

たとえば悲しいことがあったとしたら、大切な人にはそんな気持ちを認めてもらいたくなるもの。正しいとか間違いだとかいうことではなく、自分の味方でいてほしいと感じることは、ある意味においては当然であるわけです。

同じように、自分が自分の味方でいてあげることが大切だということ。ネガティブな気持ちでいる自分を、自分自身が受け止めてあげることに意味があるというのです。そうやって自分を肯定すると、不思議なくらい気持ちが楽になり、一瞬で自己肯定感が高まるといいます。(76ページより)

気持ちは体でつくられる

自分の気持ちを理解してあげる際には、その身体感覚を肯定することがとても役に立つのだとか。

東洋には「心身一如」といって、「心と体はひとつながりのもの」という考え方があるそうです。たとえばイライラしているときは眉間や肩、喉に力が入り、心臓がばくばくして頭に血が上っているもの。そしてクヨクヨしているときは、呼吸がきゅっと緊張しておなかに力が入らず、なんともいえない脱力感が全身を包み込むものでもあります。

つまり東洋では、そのような身体感覚こそが、イライラやクヨクヨの正体だと教えているわけです。その証拠に、そんなとき眉間を少しも緊張させることなく、喉や首や肩を完全にリラックスさせ、ゆったりを呼吸をしながらイライラすることなどできないはず。

なぜなら感情や気分の正体は、身体的な変化、そしてその身体感覚そのものだから。そこで、そんな変化や感覚を消し去れば、イライラやクヨクヨを継続できなくなるということです。

そして、そうした感覚を消すためにも、その感覚を肯定してあげることが不可欠。身体感覚とは、体の叫び声。脳になにかを聞いてほしいから、気づいてほしいから発する体の叫びだというのです。なのに、それをピシャリと一喝して否定したら、それだけで体が硬く萎縮しても無理はないということ。

だからまず、体の底にその感覚があることを認めてあげるべき。その感覚を邪魔ものだと否定しないことが大切だと著者は主張します。それができたら、その感覚はすーっと消えていくといいます。(78ページより)

不安は「妖怪アンテナ」に似た能力

不安感について考えるにあたり、著者は水木しげるの名作『ゲゲゲの鬼太郎』を引き合いに出しています。私たちが忌み嫌うネガティブ感情の代表格である「不安感」は、鬼太郎が持つ「妖怪アンテナ」という能力のようなものだというのです。

ご存知のとおり、妖怪アンテナとは、近くに敵がいると髪の毛がピピッと反応して身の危険を知らせてくれるもの。いってみれば、リスクヘッジ(危険回避)に欠かすことのできない危険察知能力です。

同じように不安感とは、私たちが日常生活のなかで活用できる妖怪アンテナだという発想。不安感があるからこそ、いち早くものごとに備え、好ましくない状況を未然に防ぐことができるわけです。

このままだとプレゼンは失敗するかもしれない、これを食べれば太るかもしれない、このメールを送ると嫌われるかもしれない。その不安感は、好ましくない未来を予知する優れた能力。問題は、そんな妖怪アンテナのお知らせ機能の拒絶、つまり不安感を邪魔物扱いし、その結果いつまでも不安でいることなのです。(81ページより)

だから不安を感じたら、まずはその不安感を認めてあげるべき。自分が不安であることを真正面から認めることができたら、不安感は嘘のように消えていくといいます。(80ページより)

本書の特徴は、瞑想をこのように多角的な視野に基づいて解説しているところにあります。単に瞑想の仕方をレクチャーするだけでなく、「自己肯定力」を向上させることを目的として、考え方にまで意識を向けているわけです。だからこそ、瞑想の本質を無理なく理解できるはず。そして、無理なく自己肯定力を上げることもできそうです。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年3月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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