『津島佑子』 川村湊著 『林京子の文学』 熊芳著

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津島佑子 光と水は地を覆えり

『津島佑子 光と水は地を覆えり』

著者
川村湊 [著]
出版社
インスクリプト
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784900997707
発売日
2018/01/25
価格
2,808円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

林京子の文学 : 戦争と核の時代を生きる

『林京子の文学 : 戦争と核の時代を生きる』

著者
熊 芳 [著]
出版社
インパクト出版会
ISBN
9784755402838
価格
3,024円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『津島佑子』 川村湊著 『林京子の文学』 熊芳著

[レビュアー] 尾崎真理子(読売新聞本社編集委員)

運命を糧に書き抜く

 世を去った作家の記憶が新しいうちに、読み継ぐべき作品を伝える評論が出るのは重要なことだ。

 『津島佑子 光と水は地を覆えり』は2016年2月、68歳で病没した作家に伴走し続けた、川村湊氏の評論集。父、太宰治を1歳で亡くし、実兄と自身の息子にも先立たれた津島だが、〈一貫して光輝く華やかさと明るさがあった〉という。それは十指に余る賞を獲得した才能の輝きであり、アジア各地に仲間と旅を楽しんだ、気さくな人柄も指している。

 ただ、本著を通じて振り返れば、津島作品には現代文明が人間に及ぼす暗い影が差し始めてもいた。

 晩年の長編『ヤマネコ・ドーム』『ジャッカ・ドフニ』は、根拠地を離れ、漂泊を続ける少年少女の物語。これらは3・11後の現実とも共振し、遺作『半減期を祝って』に表れた未来社会への想像力は、この先いっそう広がっていくはずだった。

 津島と同じ同人誌「文芸首都」出身の林京子が逝ったのは昨年2月。14歳まで父の赴任した中国で育ち、故郷長崎で8月9日に被爆。後遺症と闘いながら86歳まで生き抜いた。

 『林京子の文学 戦争と核の時代を生きる』の著者、熊芳氏は中国から法政大に留学中、川村氏に指導されている。「上海は私の故郷」「ごめんなさいね」と記された便りを林からもらい、関心を深めたとも記されている。

 デビュー作『祭りの場』で書かれた被爆体験は、『長い時間をかけた人間の経験』(2000年)で人類の歴史とつながった。3・11後には『再びルイへ。』で原発事故に言及した。熊芳氏は林の生涯において幾重にももつれた加害と被害の問題を、丁寧に解きほぐしていく。

 与えられた運命を糧に最期まで書いた二人の作家。作品に込めた思いを、細部まで見逃すまいとする批評家と研究者。多くを教えられた。

 ◇かわむら・みなと=1951年北海道生まれ。文芸評論家。著書に『文芸時評1993―2007』『戦後批評論』など多数。

 ◇ション・ファン=中国江西省生まれ。南昌大学外国語学院専任講師。

 『津島佑子』インスクリプト 2600円

 『林京子の文学』インパクト出版会 2800円

読売新聞
2018年3月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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