<東北の本棚>名筆から人生読み解く

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文字に美はありや。

『文字に美はありや。』

著者
伊集院 静 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163907772
発売日
2018/01/12
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

<東北の本棚>名筆から人生読み解く

[レビュアー] 河北新報

 世阿弥や宮本武蔵、西郷隆盛、夏目漱石…。歴史上の偉大な人物や文豪、著名人らの名筆を写真入りで紹介し、著者の鋭い審美眼や感性で人物の品性や人生観などを浮き彫りにした。
 40話を収録。著者は空海の書「崔子玉座右銘」とスペインの画家ジョアン・ミロの絵画「詩人の言葉」に、同じような情感を感じる。そこに共通する美を見つけ「美とは万人が共有するものを包含している」というギリシャの哲学者の言葉を引用している。
 坂本龍馬の書には、風雲児にしか書くことのできない現代的な感覚と誠実さを感じ取る。谷崎潤一郎、太宰治ら文豪の書からは、作品世界に通じるものを感受する。立川談志やビートたけしの型破りな書にも触れ、悲哀や上質なぬくもりに感じ入る。
 最終話で著者は「書、文字とは何であるのか」という問いに対し、「確たる答えはでなかったが、人間が文字を獲得した瞬間から、その情緒、さらに言えばその時間に生きていた証しがそこにあり、生きることは哀(かな)しみを常にともなうものだから、当然、書、文字には“哀しみ”が伝わって来た」とつづっている。
 著者は1950年山口県防府市生まれ。仙台市泉区在住。直木賞や柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞などを受賞。直木賞選考委員。
 文芸春秋03(3265)1211=1728円。

河北新報
2018年3月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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