<東北の本棚>北辺武将の興亡の舞台

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東北の名城を歩く 北東北編

『東北の名城を歩く 北東北編』

著者
飯村 均 [編集]/室野 秀文 [編集]
出版社
吉川弘文館
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784642083195
発売日
2017/10/25
価格
2,750円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>北辺武将の興亡の舞台

[レビュアー] 河北新報

 青森、岩手、秋田県の城計59カ所を歩いた。古代から中世、幕末まで、北辺にあって武将たちは中央権力とどう関わってきたのか。興亡の歴史の舞台を城跡に見る。
 福島城(五所川原市)は、岩木川が日本海に注ぐ十三湖の北岸に位置する。城主・安藤(安東)氏は交通の要所を押さえ蝦夷地(北海道)と交易、室町幕府を後ろ盾にライバル南部氏と対峙(たいじ)した。城は内郭と外郭の二重構造から成り、内郭は一辺200メートル四方、外郭は一辺1キロで三角形を呈する。発掘調査の結果、外郭東門跡が確認された。陸路から港へ出る関所とみられる。内郭の屋敷跡は室町期の守護館との類似性が指摘される。茶道具や香炉なども出土した。
 九戸城(二戸市)は、馬淵川の右岸に建つ。豊臣秀吉の天下統一を目前に反乱した九戸政実の居城だ。豊臣軍は豊臣秀次を総大将に5万、対する政実は5000。壮絶な戦いの後、反乱軍の武将は三迫(宮城県北)で処刑された。開城後、城は蒲生氏郷によって造り直された。往時をしのぶのは一部の堀跡のみ。近年の調査で刀傷痕を持つ人骨が出土、損傷の検討から、豊臣軍による撫(な)で切りが実際に行われたと推定された。
 本荘城(由利本荘市)は、戊辰戦争で落城、焼失した。奥羽越列藩同盟を離脱し新政府軍に回った本荘藩は、庄内軍の攻撃を受ける。天を焦がすほどの火の手を見た、と記録にある。公園整備に伴い発掘調査が行われ、土塁、門、櫓(やぐら)台跡などを確認。現在は桜咲く市民の憩いの場となっている。
 「東北の名城を歩く」の後編で、編者は前編と同様、福島県文化振興財団の飯村均氏と盛岡市教委の室野秀文氏。ほか各県の文化財担当者が執筆を担当した。
 吉川弘文館03(3813)9151=2700円。

河北新報
2018年3月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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