『身体が生み出すクリエイティブ』
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「独創的」って何?そのカギは身体に
[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)
いつもは決められた手順を守り個性を出さずに仕事をするよう要求されるのに、たまに「独創的な発想」を求められると困る。そんな人は少なくないはずだ。どうしても創造性を発揮しなければならないとしたら、何をどうすればいいのか。諏訪正樹『身体が生み出すクリエイティブ』にはそのヒントが満載だ。
例としてとりあげられているのは、すぐれた漫才のツッコミや大喜利番組「IPPONグランプリ」のお題と答え、はたまた料理のコツから野球の打撃練習まで、親しみやすいものばかり。するすると楽しく読めてしまう。
クリエイティブな発想とは、地道なリクツの展開からは出てこない「ひらめき」や「飛躍」のことである。それを確実に導き出す公式は存在しないが、実際にあざやかな飛躍をモノにしている人の手法を観察したり、著者が身をもって体験・分析したりして、この本は鋭い仮説を提出した。「跳ぼうと決めて跳び方を考える」のではなく、まず身体感覚を解放し、自分の体感に集中する。すると、いままで無視していたものが視野に入ってくる。それに身体が反応し、自然に跳んでしまっている。これがクリエイティブなパフォーマンスの正体だというのだ。
毎日満員電車に乗り、騒音や臭いや不愉快な視線などを感覚的に遮断することばかり上達すると、身体感覚は衰える。しかし鋭敏な感覚を保って生きていくのはつらい。問題の根はそんなところにあるのかも。