最上もが「つらすぎて人に薦められない」作家との対談でぶっちゃける 最上もが×一木けい

対談・鼎談

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1ミリの後悔もない、はずがない

『1ミリの後悔もない、はずがない』

著者
一木 けい [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103514411
発売日
2018/01/31
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

最上もが「つらすぎて人に薦められない」作家との対談でぶっちゃける 最上もが×一木けい

[文] 一木けい(作家)/最上もが(タレント、モデル、女優)


左から一木けいさん、最上もがさん

椎名林檎さんの推薦文で話題の小説『1ミリの後悔もない、はずがない』を読んで号泣したという最上もがさんと著者の一木けいさんが、小説をきっかけに思い出した恋愛について、記憶を消したいほどの出来事について、幸せを感じられない生きづらさについてなどについて語った対談の後篇です。

 ***

小説を読んで心をかき乱されました

最上 恋愛小説を読むと、作者がどれだけ苦しんできたかが出てますよね。

一木 出ちゃいますね。

最上 だから『1ミリの後悔もない、はずがない』を読んだ時、この作家はどれだけつらいことを経験したんだろうって。結構きついのを経験されたんですね。

一木 もがさんは本からそんなことまで感じ取れるなんて、本当に感受性が強くて、きついときもあるんじゃないでしょうか。

最上 だから本はほとんど読まないんです。

一木 それなのに読んで下さって、ありがとうございます。

最上 いえ、好きなんです。子どもの時はファンタジー小説が好きで、『ハリー・ポッター』とか『ネシャン・サーガ』とか読んでいたんですけど、想像力がありすぎるのか、本を読んでいると主人公の顔も風景も映像で見えていて、さらに風を感じることまでもあったんです。

一木 それは想像力が豊かすぎる。素晴らしいですね。大人になってからは?

最上 ある時期に江國香織さんの小説がすごく好きになってたくさん読んでいたんですけど、読んでいるといろいろ考えてしまって、脳がパンクしそうになっちゃって。自分の読み方だとたぶんすごく脳を使っているので、大人になったらそれで頭が疲れちゃって読めなくなってきたんです。

一木 江國香織さんの軽やかな文体と深い内容の小説をそんなふうに読めるなんて、やはりすごい感受性です。受け取る才能がすごい。

最上 だから久しぶりに小説を読んで、心を動かされてかき乱されました。小説の登場人物たちは、その後どういうふうに生きているんだろうって気になっています。

ネトゲで恋愛相談をされて


一木けいさん

最上 ネットゲームの中で恋愛相談を受けることがあるんですけど、顔も素性もわからないんだから焦っちゃダメだよ、まだ個人情報は明かしちゃダメだよ、とか経験しているからこそできるアドバイスが言えるようになったんです。

一木 お姉さんなんだ。もがさんの素性もバレてないんですよね。

最上 もちろんです。相手のことも知らないんですけど、ゆっくりでいいよって幸せを願っていますね。

一木 そうやってネットゲームの中の人とも友達になれるんですね。

最上 そうですね、でも女の子同士でもオフ会で会わない方が良いと思います。ネトゲーの世界ってずっと女の子が少なかったから、数少ない女の子の中で派閥ができたり、トラブルがいろいろ起きるんですよ。

一木 なるほど、会うと顔が見えますもんね。オフ会で男の人と会わない方がいいっていうのとはまた違って、女同士って面倒ですよね。

最上 そうでね、今ぼくがいちばん仲良くしているのは、中学の時ぼくをいじめてた子なんですよ。ずっと後になっていじめてた原因がわかって仲良くなって、一緒にいると楽しいし、ポジティブだし、今はその子がいてくれるからすごく助けられています。

念願の制服デートだったのに

一木 もがさんが気に入って下さった「西国疾走少女」は初めての恋を描いた小説なのですが、もがさんの初めての恋はどうでしたか?

最上 ぼく中学の時は本当にモテなくて、ずっとモテたかったんですよ。それでお母さんに、「モテたい、彼氏欲しい」って相談したんです。そうしたら、「あなたは10代は無理よ、でも20代になったらモテるよ」って言われて。でも、今モテたいし、制服デートしたいし、って。そうしたら、その後しばらくして前から気になっていた男の子に告白されて、一緒に登下校もしたんですけど、3日で振りました。

一木 えー、念願の制服デートなのに、何で?

最上 あまりにも男性に慣れてなくて、緊張しちゃってドキドキして胃が痛くて心臓がもたない。毎日がライブ前日、みたいな緊張感で、楽しいのに楽しくないんです。その緊張から抜け出したくて、もうやめたい、って振っちゃいました。

一木 ピュアすぎる! 手を繋ぐとかそういうレベルじゃないですね。

最上 だから、つきあったわけじゃないですね。ぼく、つきあうの定義もわかってなくて。

一木 後悔は1ミリもないですか?

最上 まったくないです(笑)。普通の学校生活に戻れてホッとしました。

一木 感受性が強すぎて、恋愛体質じゃないんでしょうか。簡単に好きになれない?

最上 表面上は好きになるんですよ。憧れるとか、眺めてカッコいいな、とか思っているくらいでちょうどいいんですよ。

一木 私は憧れの先輩を遠くから見ているだけというような経験はないんです。好きになった人には自分から話しかけたり、一緒にいたいと思う。

好きな人に自分から話しかけられない

最上 自分で好きな人に話しかけたり、絶対できないです。顔真っ赤になっちゃう。

一木 いつから普通に男性と話せるようになったんですか?

最上 短大行った頃からかな、少しずつ免疫がついて、社会人になったらもう照れてる場合じゃなくなって。あと、だんだんわかってきたのが、みんな寄ってくるけど本気じゃないなって。

一木 そんなことないと思いますよ! 簡単に人を信じないというのは、その辺りからですか?

最上 期待しないことを覚えたんです。期待しても結局へこむのがわかっているから、怖いから自己防衛ですね。

一木 本当は期待したいですよね。期待されたいし。

最上 それはもう。でんぱ組.incを脱退した時にもいろいろなことがあって、二度と人を信用しないって思って……。

一木 私もだいたい人を信用できないんですけれど、最上さんにとって家族はどんな距離ですか? おだやかな家で育った人は信じるのも上手だし、あまり人を疑ったりしないで済む平和な心を持っているような気がします。

最上 ぼくは自分の家族は絶対裏切らないと思えるので、信用してますね。きょうだい喧嘩はあるけど根っこは仲良いです。ただ、心をさらけ出しているわけではないです。

一木 もがさんは3人兄妹の真ん中なんですよね。私は4人姉弟の長女で、両親は愛し合っていたんですけれど父親にすこし問題があって、経済的にも厳しい状況で普通の家族ではないことが恥ずかしかったんです。そのせいかずっと自分に自信が持てなくて……、それで人の痛みに関しては、あらゆる可能性を考えるようになったかもしれません。

最上 きっと痛みを経験してるからこそ、人の痛みがわかるんですよね。

あの頃の記憶はぜんぶ飛んで欲しい


最上もがさん

一木 もがさんはすごく気持ちが落ちちゃった時に、自分を立て直すのがたいへんだから、他人に期待しないし、誰も信用したくないって感じなんでしょうか?

最上 そうです、すごく落ちちゃった時に、もう上がれないかと思って、解決する方法は死ぬことだけと思ってしまったんです。ある意味では逃げだと思うけど、勇気のいることですし、それしか考えられないほど落ちてしまうということがあって。だからでんぱ組.incを脱退した頃は記憶が定かではなくて、できれば記憶はぜんぶ飛んで欲しいと思いました。今やっと抜け出してきているんですけど、あの頃には絶対戻りたくない。たくさんの人に迷惑をかけてしまうのも、お仕事ができなくなるのもよくわかっているので。じゃあ、戻らないためにはどうするかというと、人を信用しない、期待しない、託さない、すべて自分のためにやろう、って思うんです。

一木 もがさんのつらさは想像することしかできませんが、なんとなくわかる気がします。私にも落ちすぎて記憶が定かではないこと、ありますから。

最上 人はひとりでは生きていけないけど、誰かの感情に動かされてしまいますよね。本来自分の感情は自分でコントロールできるはず。コントロールできない時っていうのは恋愛とかですから、そっちの感情に持っていかないために今は封印しているんです。

一木 なるほど、もがさんがブログに「適度な距離感を探すくらいなら離れたくなる」って書いていらしたので、本当にそうだと思って。私もすぐ離れたくなります。人に迷惑かけるくらいだったら、会わない方がいい。

最上 落ちてる時は人に会いたくないですよね。感情が負の方向にしか出なくなっちゃうから、人に迷惑をかけたくない。

まだ幸せと感じたことはありません

一木 この本のタイトルにした「1ミリの後悔もない、はずがない」という言葉についてどう思いますか。

最上 ぼくは、終わり良ければすべて良し、だと思っているんです。だから死ぬ前に幸せだったらいいかな。幸せと思いながら死にたい。

一木 もがさんにとって幸せとはどんなことですか?

最上 わかりません。それは経験したらわかるんじゃないかな。まだ「幸せ」という気持ちは経験していません。

一木 ゲームしている時は?

最上 いや別に、幸せとは感じていません。まだ知らないんだと思うんです。後悔はしていると思うんですけど、一回でも幸せ、と思ったら、人生に納得できているから、後悔はなくなるんじゃないかな。これからあったらいいな。この小説の由井は、いま幸せだから後悔していないんですよ、幸せを感じられたらそこまでの道は間違っていない、ってことですよね。しかも過去は変えられない。正直後悔なんてしても仕方ない、反省して次に活かせるかもしれないけれど……。今は幸せもぬくもりも感じていないです。

一木 もがさんは鏡を見たら幸せになれると思いますけど。

最上 えー、本当ですか。じゃあ一木さんにとっての幸せって何ですか。

一木 私は1日に1行でも、これを書きたかった、と思える文章が書けたら幸せです。1週間に1度でもいい、その時がいちばん幸せ。

最上 最近「瞬間日記」っていうアプリで日記を書きだしたんですけど、1日に何回も書いてしまって、ずーっと病んでて、すごいことになっちゃいました(笑)。悲しかったり苦しかったりする時にしか書かないから。でも、文字にすることで自分で消化できるところがある、自分で心の整理をしているのかな、何となくすっと腑に落ちますね。

一木 もがさんは書いた方がいいですよ。ブログも、そのほかで書かれている文章も、すごく切実で大好きでした。これからも書かれるものを楽しみにさせていただきます。

最上 こちらこそ、次の小説もぜひ読ませて下さい!

一木 ありがとうございました。

〈最上もがさん〉スタイリスト:ヨシダミホ ヘアメイク:澤西由美花(クララシステム)

Book Bang編集部
2018年4月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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