『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』 ロバート・ムーア著

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トレイルズ「道」と歩くことの哲学

『トレイルズ「道」と歩くことの哲学』

著者
Moor Robert [著]/岩崎 晋也 [訳]/ムーア ロバート [著]
出版社
エイアンドエフ
ISBN
9784909355027
価格
2,376円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』 ロバート・ムーア著

[レビュアー] 服部文祥(登山家・作家)

生命の小道 謎に迫る

 北米アパラチア山脈の麓を繋(つな)ぐ自然歩道アパラチアン・トレイルは全行程が3500キロあり、世界でもっとも有名なロングトレイルである。近年ではシーズンに二千人ほどのハイカーが、人生の意味や癒やし、挑戦、逃避、瞑想(めいそう)、あるいは神を求め、全行程踏破(スルーハイク)に訪れる。

 学生時代から読書とアウトドアに馴染(なじ)んだ著者もスルーハイクをおこなったが、そこで他のハイカーとは違う根源的な問いに取り付かれた。いったい「トレイル」とはなんなのか。

 ここでトレイルとは、生き物がその身体を使い、時間をかけ、時には世代を超えて踏み固めた小道や歩道を指している。謎の中心はトレイルに見え隠れする生き物の知性。たとえば、アリはエサに辿(たど)り着くトレイルをフェロモンを印にして作り出す。多くのアリがその道筋を辿るうちに小さなトライ&エラーが集積し、アリの行列はより効率的なルートをとるようになる。まるで知性があるかのように……。著者がトレイルに感じる、命の優美さや、効率性と柔軟性と耐久性のバランス、それを作り出す生き物たちの知恵はいったいどこから来るのか。

 トレイルの謎を求めて著者は、道ではない原野を掻(か)き分け、さまざまな動物の踏み跡を追い、ときには遊牧民、ときにはハンターと行動をともにする。効率的な移動という主要な目的を維持しながら、マイナーチェンジを繰り返すさまざまなトレイルは、それを辿る生き物にとって、外在化した情報であり、交流の場であり、伝統であり、社会的記憶装置でもある。北米先住民のトレイルは、先住民が口述で伝えてきた物語と合わさることで、後世に教訓や民族としてのアイデンティティーを伝えていく。

 道が四方八方に分散するように、著者の調査と思索も多岐にわたる。トレイルに迫りながら本書は、同時に命の謎に迫り、ひとつの道として読者に踏み固められることを待っている。岩崎晋也訳。

 ◇Robert Moor=米イリノイ州生まれ。ジャーナリスト、ハイカー。本書で全米アウトドアブック賞受賞。

 エイアンドエフ 2200円

読売新聞
2018年3月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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