【文庫双六】テレビ映画の全盛期輝いていたウエスタン――北上次郎

レビュー

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アリゾナ無宿

『アリゾナ無宿』

著者
逢坂 剛 [著]
出版社
中央公論新社
ISBN
9784122063297
価格
799円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

テレビ映画の全盛期輝いていたウエスタン

[レビュアー] 北上次郎(文芸評論家)

【文庫双六】核戦争後の世界を描く奇才エリスンの傑作――梯久美子
https://www.bookbang.jp/review/article/549981

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「少年と犬」の作者ハーラン・エリスンは、「アンタッチャブル」や「0011ナポレオン・ソロ」などのテレビ映画の脚本も書いていたという。懐かしい。

「アンタッチャブル」が日本で放映されたのは1960年前後だが、当時数多くのアメリカ製テレビ映画が日本に上陸し、中学生の私は夢中になってそれらを観ていた。

 いまでも忘れられないのは、ウエスタンだ。クリント・イーストウッドの「ローハイド」、スティーヴ・マックイーンの「拳銃無宿」、そして「ララミー牧場」「ローン・レンジャー」などなど、すべてそのころ放映されたものである。それらのウエスタンがアメリカで下火になるにつれ、日本でも放映されなくなった。我が国でウエスタンのテレビ映画がヒットした期間は10年以上はあっただろうと思っていたが、調べてみるとその放映期間は5年前後にすぎない。結果的には一時のブームにすぎなかったことになるが、それでも中学生の私が食い入るようにテレビを観ていた事実は消えない。

 小説の世界でも西部小説は日本に根づかず、これまでの西部小説の翻訳叢書はことごとく失敗してきた。最近、エルモア・レナードが1961年に書いたウエスタン『オンブレ』が新潮文庫から突然刊行されたが、翻訳者が村上春樹でなかったら、出てこなかっただろう。しかし、ご安心。我が国にも西部小説を書く作家がいるのだ。熱狂的なウエスタン愛好家としても知られる逢坂剛だ。

 ここでは、その記念すべき1冊として、『アリゾナ無宿』をあげておく。賞金稼ぎを生業とする男と、ハコダテから流れてきたサムライ、そして16歳の少女が旅に出るロードノベルである。第2作『逆襲の地平線』では、この3人に若きガンマンが加わり、さらにはサムライ(実は土方歳三)の前日譚『果てしなき追跡』も書かれているが、同好の士は、まずはこの第1作から読まれたい。

新潮社 週刊新潮
2018年4月5日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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