『問題だらけの女性たち』 ジャッキー・フレミング著

レビュー

5
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問題だらけの女性たち

『問題だらけの女性たち』

著者
ジャッキー・フレミング [著]/松田 青子 [訳]
出版社
河出書房新社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784309207391
発売日
2018/03/22
価格
1,296円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『問題だらけの女性たち』 ジャッキー・フレミング著

[レビュアー] 岸本佐知子(翻訳家)

ユーモアを備えた怒り

 「女性の知能は発明や創造には向いていない。男性を讃(たた)えるのが天職だ」。誰かの炎上ツイートではない。美術評論の大家ラスキンの言葉だ。「女性はボールを投げるより拍手をしているほうが自然」そう言ったのはオリンピックの父クーベルタン男爵。「いかなる女性の試みもやるだけ無駄」by文豪モーパッサン。「男性がすべてにおいて優れているのは明白」進化論の祖ダーウィンさんまでこんなことを。

 十九世紀、女性は男性より脳が小さく、感情的すぎるので論理的な思考はできず、学問にも芸術にも不向きであると信じられていた。著者は当時のそんな“科学的常識”を、ユーモアと皮肉たっぷりのイラストと文で紹介していく。

 読み進むほどに襲いくる、呆(あき)れと驚きの千本ノック。でも「あー、十九世紀に生まれなくてよかった」とは少しも思えないところが恐ろしい。この時代と、Me Tooの叫びが止まらない現代は、明らかに地続きだ。

 だがこの本、めちゃくちゃ笑えるのだ。著者は十九世紀的常識をわざとしれっと肯定してみせることで、えも言われぬ可笑(おか)しみを引き出す。体を二つ折りにし、両腕をだらんと垂らして立つ女性たちの絵に「女性はコルセットをしないとまっすぐ立っていることができなかったので、それなしの生活は考えられませんでした」と文章が添えられている。「女性による芸術は時としてうっかり評価されてしまうことがありましたが、その間違いは歴史のゴミ箱に捨てることで簡単に修正することができました」の文の下に、ロココ風の猫足つきのゴミ箱の絵。すっとぼけた絵と文の向こうに、著者の不敵な笑みが透けて見える。そして爆笑しながら、ムカつきながら、いつしか読んでいるこっちまで口の端二ミリぐらいで不敵に笑っていることに気づく。

 ユーモアを備えたとき、怒りはかつてないほどの強さと飛距離を獲得する。それをみごとに証明してみせた一冊だ。松田青子訳。

 ◇Jacky Fleming=漫画家、イラストレーター。新聞や雑誌に作品を発表し、本書を含め7冊の漫画を刊行。

 河出書房新社 1200円

読売新聞
2018年4月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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