『よりよく生き延びる―3・11と男女共同参画センター』
- 著者
- せんだい男女共同参画財団 [編集]
- 出版社
- 新潮社
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784109101066
- 発売日
- 2017/11/17
- 価格
- 1,430円(税込)
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
<東北の本棚>役割自問し支援に動く
[レビュアー] 河北新報
仙台市はエル・パーク仙台、エル・ソーラ仙台という二つの男女共同参画推進センターを設置している。東日本大震災発生を受け、指定管理者として運営するせんだい男女共同参画財団のスタッフが、その役割を自問しながらさまざまな支援活動に取り組んだ足跡をつづった。
手探りのスタートだった。震災直後の会議で女性の電話相談を受け付ける窓口の開設を提案した時、市から出向している上司は難色を示した。相談員も被災しており体制が整わない。根拠法に定められた手続きを行うのが行政の基本であり、定められていない緊急相談に取り組むことに慎重になるのも無理はなかった。
しかし現実に、避難所生活にはトイレやプライバシーなど女性ならではの困難があり、家族の不安の受け皿にもなっていた。個々の女性の問題としてでなく、解決すべき社会課題として取り組むのがセンターの仕事ではないか。そんなスタッフの熱意が壁を打ち破った。
2011年3月下旬、センターはNPO法人の協力を得て電話相談の窓口を開設。暮らしや育児、介護などに関する多くの不安や悩みの相談に応じた。4月には避難所の女性の衣類を預かり、洗濯して返す活動「せんたくネット」も開始。8月までに延べ287人の女性ボランティアが協力し、520袋の洗濯物を扱った。
震災前から、センターはその存在意義について自問を重ねていた。06年、市は行財政改革の一環でエル・パーク仙台の廃止を検討。市民の反対があって存続が決まったが、必要性を否定されたかのような苦い経験が「地域に何を求められているのか」を真剣に考えさせた。
「生活に欠かせないインフラとは違い、男女共同参画は目に見えない。ドアがないところに、必要となるだろうドアをつくるような仕事なのだ」の一文が重い。非常時こそ、目に見えないニーズをいかにくみ取るかが問われるのだろう。
新潮社03(3266)7124=1404円。