6年かけて撮影した世界中のベッドルーム “天井から覗くリアル”

レビュー

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My Room 天井から覗く世界のリアル 55ヵ国1200人のベッドルーム

『My Room 天井から覗く世界のリアル 55ヵ国1200人のベッドルーム』

著者
John Thackwray(ジョン・サックレー) [著]
出版社
ライツ社
ジャンル
芸術・生活/写真・工芸
ISBN
9784909044112
発売日
2018/03/16
価格
3,024円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

どのページを開いても何かを話せる、何かを語れる

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 著者は6年間かけて、世界中の若者のベッドルームを撮影した。55カ国、1200人、18歳から30歳のあらゆる立場の若者たちは、部屋の真ん中に座り、天井の広角レンズを見上げた。その中の84名の部屋の写真が収められている。同じ構成の文章の隣に、同じアングルの写真。日本の読者にとって、馴染み深い文化、そうではない文化、知らない町の知らない生活。どの写真も等価に並んでいる。彼らの表情はリラックスしていて、自身についての重要で、本質的な言葉をたくさん話してくれている。どんなトピックからも語ることができる写真集だ。

 私が特に心惹かれたのは、寝具だった。寝具に使われる布、だ。その色柄は、大抵、部屋のいちばん大きな面積を占めている。深い赤のベロア、幾何学模様のプリント、無地、キャラクター柄、伝統模様の手染め風……連続するモチーフ。誰もがその布の中で身を丸める。この寝具をこの部屋に置いたときのことを想像する。どんな布の臭いがしたのだろう。

「この世界は無限に複雑」で、「それが世界の魅力」でもあるが、「同時に無限にアンフェア」だと、著者は述べる。無限にアンフェアな人生の縮図の情報量にすっかり参ってしまったからこそ、私の思考はとりあえずテキスタイルに着地した。

 伝統的な生活を守る者、故郷から出る者、暴力的な社会の中で、独りで子供を育てる者、大虐殺を生き延びた者。格差は言うまでもなく、人生の中で、自分で選び取れる領域は、全てではない。ページを開く度に、新しい発見がある。隣の国の、同じ時代の子供たちが体験した「歴史」が、ふっと見える瞬間もある。

 フランスで始まったこの旅は、著者のルーツのひとつでもある南アフリカで幕を閉じた。本書の最後には、南アフリカの大統領であったネルソン・マンデラの言葉が引用されている。「私の長い道のりはまだ終わっていない」と。

新潮社 週刊新潮
2018年4月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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