我々は“月への一歩”からどれだけ進歩したか――

レビュー

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宇宙に命はあるのか

『宇宙に命はあるのか』

著者
小野 雅裕 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784797388503
発売日
2018/02/07
価格
864円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

未知だらけの宇宙 小さな我々の進歩

[レビュアー] 小飼弾

「宇宙は我々を試している。人類が進歩したか、していないかを」。1982年生まれの小野雅裕の著した『宇宙に命はあるのか』のこの言葉を前にして、1969年生まれの選者は気恥ずかしくならずにいられない。同年人類は月に最初の一歩を踏み出した。我々は、そこからどれだけ進んだか。

 同年に密かに産声をあげたインターネットと比較すると、停滞どころか退歩しているようにすら見えなくもない。決意表明から10年足らずで人類を月に送り込んだ国は、2011年に人を宇宙に送り込む能力さえ失ってしまったというのにそのことを悔やんでさえいない。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスがネットで成した財を宇宙に投じているのは希望が持てるけれど、ファルコン・ヘビーさえサターンVの前では赤子同然……。

 本書を繙(ひもと)けば、まるで進んでいないわけでもないことは再確認できる。パイオニアとボイジャーは最遠の太陽系惑星である海王星を超えた。ニュー・ホライズンズがたどり着く前に冥王星が準惑星に降格されたのだって観測技術の進歩の賜物。はやぶさはアポロより遠いところからサンプルを持ち帰ったし、太陽系外惑星は「あって然るべき」ものから「実際にいくつも見つかる」存在になった。

 しかし我々のほとんどはスマホ越しに足元を見るのに忙しく、宇宙(そら)を見上げようとしない。著者(a man)の熱い眼差しを、人類(mankind)が共有する日は来るのだろうか。ホモ・アストロルムとなるその日まで。

新潮社 週刊新潮
2018年4月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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