『私の少女マンガ講義 = Lectures on Shōjo manga』
- 著者
- 萩尾, 望都, 1949-
- 出版社
- 新潮社
- ISBN
- 9784103996026
- 価格
- 1,650円(税込)
書籍情報:openBD
私の少女マンガ講義 萩尾望都 著
[レビュアー] 小林深雪(児童文学作家)
◆生命が輝きだす瞬間
萩尾望都先生の漫画を読むと、いつも天地がひっくり返るほどびっくりする。そして、その作品の余韻は、不思議な重みを持って胸の奥に深く深く沈む。こんな刺激的な体験は、めったにできない。
著者の漫画を読んだことのない方、少女漫画に興味がない方。今、この書評をスルーしようとしたあなた。ちょっと待ってください! 四十六ページを開いて、八ページだけ読んでください。そうしたら、この本のすべてと萩尾漫画を読まずには、いられなくなるはず。
そこには、野田秀樹さんも舞台化したあの傑作短編「半神」の全十六ページが再録され、どのように、この漫画を紡ぎ出したのか、その創作作法がページごとに語られているのです。すごい!
漫画の中の主人公たちは、常に瞬間のコマの中にいます。その停止画の連続がみずみずしく動き、輝き出し、わたしたちの前に生命を持って現れる。その秘密を、あなたは知りたくないですか?
一九六九年のデビューから常に漫画のフィールドを広げてきた萩尾先生が、イタリアで行った講義を完全収録。その鋭い洞察力と漫画への深く優しい眼差(まなざ)しで「リボンの騎士」から「大奥」まで、少女漫画史を紐(ひも)解いてくれます。また、原発事故をテーマにした「なのはな」や新作「春の夢」など自作を語るインタビューも。全漫画関係者と漫画好きは必読!
(新潮社・1620円)
<はぎお・もと> 1949年生まれ。漫画家。著作『ポーの一族』『11人いる!』など。
◆もう1冊
福田里香著『まんがキッチン おかわり』(太田出版)。「ポーの一族」など名作漫画から生まれたお菓子とエッセー。