「プレゼン」において「きれいに話す」よりも大切なことって?

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1分で話せ

『1分で話せ』

著者
伊藤 羊一 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784797395235
発売日
2018/03/15
価格
1,512円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「プレゼン」において「きれいに話す」よりも大切なことって?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(伊藤羊一著、SBクリエイティブ)の著者は、孫正義氏の後継者を育成する学校であるソフトバンクアカデミアの国内CEOコースにおいて、年間1位の成績を修めた実績の持ち主。現在はヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長として、次世代リーダーの育成に携わっています。

いまでこそ「伝える」「プレゼン」が重要な仕事になっているものの、社会人になった当時はプレゼンが大の苦手だったのだとか。しかし、やがてグロービス経営大学院で「ストーリー」のつくりかたを学んだことが、伝え方を改善するための大きな気づきとなったのだそうです。

そもそも話が通じない人は、こんな話し方になっていると思います。 「昨日部長はああ仰っていましたが、現場ではBという問題があり、だから私としてはこうしたいのですが、Cさんはまた別の意見を持っていてですね…」 このように、ストーリーはおろか、事実と自分の意見をただ羅列しているだけ。要は全部ダラダラと話しているだけなのです。だから必然的に話が長くなるし、相手も何が大事なのかわかりません。 ストーリーを考えようとするなら「何が大事なのか」、そして「どうしたら相手に伝わるのか」をきちんと考えることが必要になります。だからこそ1分でも伝わるような凝縮した言葉になるのです。 (「まえがき」より)

そこで本書では、著者が長い時間をかけて身につけてきた「伝える」ためのスキルを紹介しているというわけです。きょうは第1章「『伝える』ための基本事項」に注目し、ベーシックな考え方を確認してみましょう。

相手は誰か? どんなことに興味があるのか?

「なんのためにプレゼンするのか」を言語化してみると、ほとんどの場合、「(どこで)誰に、なにを、どうしてもらいたい」という構造になっているのだと著者は記しています。そして最大のカギは、「誰に」という部分。あたり前ではありますが、プレゼンテーションは人になにかを伝え、理解してもらうか、賛成してもらうか、動いてもらうかを目指して行うからです。 そこで、この「相手が誰か」をイメージしながらプレゼンをつくっていくことが大切だという考え方。いわばこれは、「誰に」伝えるものなのか、相手はなにを考えているのかについて考える段階。具体的には、

・ どういう立場にいるのか

・ どんなことに興味があるのか

・ どんなことをこのプレゼンに求めているのか

・ 専門的な要素についてどのくらい理解できるか

・ 何をどんな風に言うとネガティブな反応をするのか

(26ページより)

といったことを意識するわけです。聞き手のイメージができれば、その人たちの反応を想像しながら準備することが可能になります。それは、話す内容、言葉遣い、話し方など、その「聞き手のイメージ」に基づいて伝える内容をつくりあげていくということです。(25ページより)

ゴールはなにかーー「理解してもらう」はゴールにならない

「なんのためにプレゼンをするのか」「聞き手はどんなイメージか」を考えたあと、次に考えるべきは「ゴールはなにか」。このプレゼンを通して、「聞き手をどういう状態に持っていくか」「どこをプレゼンのゴールとするのか」を言語化するということです。具体的にいえば、

・ 聞き手が賛成にせよ反対にせよ、何らかの意見を表明してくれればいいのか

・ 聞き手が賛成してくれたらいいのか

・ 聞き手に動いてもらう必要があるのか

(30ページより)

というように、聞き手が「どこまでやればいいのか」を決めるということ。私たちはつい、このゴールを強く意識することなく、プレゼンの準備を始めてしまうものだからこそ、この点は重要だといいます。

「プレゼンの時間が設定された、テーマは××についてだ、おそらくこんなことを説明しなければいけない、よし、資料づくりを始めよう、パワーポイントを立ち上げよう、タイトルはどうしたらいいか…」と、なんとなく手を動かしながら準備を始めたりしがちだということ。しかし、それは準備の仕方としては明らかに間違っているというわけです。

すべてのプレゼンは、ゴールを達成するためにあるもの。聞き手のことを考え、聞き手をどういう状態に持っていきたいかを見定めてから、「それを実行するためになにをすればいいか」「なにを伝えればいいのか」を逆算で考えていくべきだというのです。

とかく「理解してもらう」というゴールを設定しがちですが、それがおかしいのだと著者。伝える側が、聞き手に「理解したうえで、どうしてほしい」のか、「君が動くのか私が動くのか」「どうすればいいのか」ということを、必ず考えなくてはならないということ。(29ページより)

結局、動かしてなんぼーー「きれいに話す」のは目的じゃない

プレゼンというと、「資料をつくって、人前でなにかを話す」という、その局面だけを切り取って語られることが多いと著者は指摘しています。しかし、そうやってなにかを伝えるのは「手段」。先にも触れたように、ゴールはなにかしらの形で「相手を動かす」こと。

どれだけきれいに資料がつくれたとしても、いくら流暢に話ができたとしても、相手が動かなければ意味がないということです。なぜなら、相手が自分の望むゴールにいないから。しかし求められているのは、とにかくゴールに相手を動かしていくこと。だから「動かしてなんぼ」なのだと著者はいいます。
そう考えると、たとえばプレゼンに至る前の根回しとか、そもそも席配置をどうするか、直前の軽い挨拶、その後のフォローなど、前後のアクションもトータルで設計していくことが大事だということにもなるはず。

そんなことも含め、とにかく「相手が動くために、できることすべてをやりきる」ことが大切だという考え方です。

たとえば私は、社外で講演をする時、始める前に可能な限り聞き手の方々とコミュニケーションをとり、聞き手との距離を縮めておくということをよくやっています。また、上司に何かを提案する際には、事前に可能な限り「こういう話をするんだ」という情報を細切れで投げ続け、「心の準備」をしてもらうようにしていました。 また、あえてプレゼンに複数の「ツッコミどころ」を用意しておき、プレゼン後の質疑応答が活発になるように準備することさえあります。(36ページより)

プレゼンの本番その場だけで相手が動かなかったとしても、まだチャンスはあるということ。終了後にも手を替え品を替えいろいろなことを行い、その結果として最終的に相手が動けば、それでゴールは達成できるわけです。

だからこそ、「動かしてなんぼ。相手が動くためにできることすべてをやりきる」という意識を持って望むべきだということです。(35ページより)

こうした基本的な考え方を踏まえたうえで、以後の章では「1分で伝える」「1分でその気になってもらう」「1分で動いてもらう」ためのコツなどがわかりやすく解説されています。著者自身の体験談も豊富に掲載されているため、自分自身の状況に置き換えてみることも容易。効果的に伝える技術を身につけたいという方は、手にとってみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加