官僚たちのアベノミクス 異形の経済政策はいかに作られたか 軽部謙介 著

レビュー

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官僚たちのアベノミクス 異形の経済政策はいかに作られたか 軽部謙介 著

[レビュアー] 服部茂幸(同志社大教授)

◆見せ方だけは巧みに

 本書は二〇一三年四月に異次元緩和が始まるまでのアベノミクスの形成過程を追跡したものであるが、様々な裏話があって興味深い。今年三月まで日銀副総裁だった岩田規久男氏などの考えに従い、政治家たちは2%のインフレ目標の早期実現を目指すことを日銀に約束させた。当時の甘利明経済再生担当相は、その進捗(しんちょく)状況は経済財政諮問会議によってチェックすると明言したという。

 けれども、五年がすぎてもインフレ目標達成の目処(めど)はたたない。経済財政諮問会議は日銀の約束違反をチェックすることを忘れている。押しつけた側だったはずの岩田氏も、今では金融政策は全てではないと言い訳している。インフレ目標も、説明責任も全く無意味であることが分かる。政治は時として不合理な政策を採用するが、不合理な政策は結局のところ失敗するのである。

 本書によると、自民党でも緩慢なインフレを起こしてデフレから脱却するというリフレ派に懐疑的な人が主流である。しかし、政治家たちは白川方明(まさあき)前総裁の「見せ方」が下手なことには不満であった。総裁が黒田東彦(はるひこ)氏に代わっても、デフレ脱却という目標がはたせていないのは同じである。見せ方が格段に上手(うま)いことと、それによって政治家たちの批判を回避できていることの二点は、日銀にとって好都合なことだと言えるであろう。
(岩波新書・929円)

<かるべ・けんすけ> 時事通信社解説委員。著書『ドキュメント ゼロ金利』など。

◆もう1冊 

 篠原尚之著『リーマン・ショック』(毎日新聞出版)。発生時、財務省の財務官として対応に当たった著者の回想録。

中日新聞 東京新聞
2018年4月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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