投資・投機・ギャンブルの違いって? 「最高の家計」を実現するために知っておくべきこと

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お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計

『お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』

著者
岩崎 淳子 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784478103463
発売日
2018/03/24
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

投資・投機・ギャンブルの違いって? 「最高の家計」を実現するために知っておくべきこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』(岩崎淳子著、ダイヤモンド社)とはユニークなタイトルですが、つまりは「お金が増え、心配がなくなる『最強の家計』システム」を紹介したもの。著者は米カリフォルニア州在住の、米国公認会計士/パーソナル・ファイナンシャル・スペシャリスト(CPA/PFS)です。
そんな著者によれば、家計の問題は、計算上の損得だけで解決できるものではなく、ものの考え方や文化にも影響されるのだそう。そこで本書においては、日米両方の文化と家計に接してきたファイナンシャル・プランナーならではの視点を盛り込んでいるわけです。しかも、ここで提示されている方法はとても簡単なようです。

本書の方法は“初期設定”さえしてしまえば、あとはほぼ何もする必要がありません。きっと難しい金融の知識が要るのだろうとお思いかもしれませんが、誰にでもできるごくシンプルな作業だけです。(中略) 本書は、経済・金融・ファイナンスの知識がない人でもわかるよう、なるべく難しい言葉や数式を使わないで解説をしてまいります。それでも迷子になりそうになったときは、次の2つのキーワードを“道しるべ”としてください。

1つめはすでに登場した「何もしない」です。お金のことになると、私たちはどうしてもあれこれと不安になってしまいますが、じつは「ジタバタと動かないで済むしくみ」をいかにつくるかが家計管理のカギになります。

もう1つは「平均狙い」です。(中略)お金の世界では「すごく儲かる」と「すごく損する」との中間、すなわち“ふつう”を狙うことこそが、手堅く資産をつくっていくための何よりの秘訣なのです。(「Prologue 『家計のシステムをつくる』」より)

では、家計システムを構築するときは、なにをすればいいのでしょうか? それを明かしてしまうと本書を読む楽しみがなくなってしまうので、きょうは純粋な疑問に答えてくれているChapter 6「まだここが気になる! 最高の家計Q&A」から、いくつかのトピックスを引き出してみたいと思います。

Q:投資なんて…結局ギャンブルですよね?

A:根本的にギャンブルとは違いますし、投機でもありません。「何もしない&平均狙い」は最も手堅い投資です。(238ページより)

「株なんてギャンブルだ」と言う人がいますが、著者もたしかにこれを認めています。なぜなら結局のところ、ギャンブルであるかないかは、その人のスタンス次第だから。つまりイチかバチかで株に“賭けて”いるのであれば、その人がやって要るのはギャンブルだということになるわけです。

なお、このことを理解してもらう際に著者がまず伝えているのは、「ギャンブル」「投機」「投資」という3つの言葉の違いなのだといいます。

まず競馬やパチンコ、カジノなどのギャンブルの場合は、必ず胴元がいるもの。最終的には胴元に利益が出るように(賭け手が必ず損をするように)確率計算がなされているのがギャンブルのしくみだということです(期待値マイナス)。

これに対して、一定のリスクは取りつつも、長期的にはプラスの利回りを出していくことが前提になっているのが投資(期待値プラス)。たとえば本書では「インデックス投信」の自動積立が紹介されているのですが、これは短期的な下落があっても、長期的にはプラスへの平均回帰が起こり、一定の利益を手堅く稼いでいく手法なのだそうです。

ギャンブルの場合は、「平均」がそもそもマイナスに位置しているので、分散効果が働くほど損の可能性が高まるのが特徴です。たとえば、毎日同じパチンコ台で同じお金を賭け続ければ、その人の勝率は間違いなく「平均」=「負け」に近づいていきます。(239ページより)

そして、そんなギャンブルと投資の中間に位置するのが投機。投機は売り手と買い手の勝負であり、市場には勝った分だけの負けが存在するゼロサムゲームだということです(期待値ゼロ)。

「事前に確率計算をしている胴元」と「確率を知らされていない賭け手」が戦うギャンブルとは異なり、投機では市場参加者同士の戦いが行われるということ。そのため、知識・経験と情報に基づいた分析によって「機」を見極めることができれば、ある程度は確率を高めることが可能だとされているわけです。

このように「なにもしない&平均狙い」のインデックス投信は、「期待値マイナス」のギャンブルとは違い、「平均以上」をがんばって狙おうとする投機とも区別されるというのが著者の考え方です。(238ページより)

Q:もっといい方法ってほかにないんですか?

A:どれだけリスクを取りたいか、どれだけ手間を賭けられるか次第です。(241ページより)

本書では繰り返し「インデックス投信」が勧められていますが、その一方、巷ではさまざまな資産運用の方法が推奨されてもいます。そのため、「もっとほかにもあるんじゃないの?」と感じる人もいるはず。

そこで著者はそういう方のために、主要なもの(インデックス投信、アクティブ投信、個別株、FX、外貨預金、不動産投資、インデックスETF)の特徴をまとめています。このうちインデックス投信、アクティブ投信、個別株については本文で詳細に解説されているのですが、まず見ておきたいものとしてここでクローズアップされているのがFXと外貨預金。

FX(外国為替証拠金取引)は、おもに特定の外国通貨と日本円との為替差益で儲ける取引。第一に、1つの外貨だけを選ぶという意味においては個別株と同じで、リスク分散の要素はありません。また基本的には短期的な売り買いを前提としたゼロサムゲームであり、投機的な性質を持っているのだとか。

そのため機を読む能力に長けていれば大きな利益を上げられる可能性はあるものの、為替の動きを絶えずウォッチしておく必要がある(アクティブ型)ため、忙しい人には勧められないといいます。

外貨預金は、短期的な売り買いではないという意味ではパッシブではあるけれども、特定の外国通貨で預金しているため、平均狙いによるリスク分散は不可能。FXと同じような、相当の為替リスクが残るわけです。

通常の国内預金とくらべれば利回りは高いかもしれませんが、あくまで預金なので投資とも呼べる水準ではないということ。預金と聞くと安全そうなイメージを抱いてしまうかもしれませんが、為替リスクと手数料のせいで元本割れの可能性はつねにあるのだといいます。(241ページより)

Q:現物のある不動産投資のほうが手堅い?

A:スキルと時間があるなら○。ただし、現物があるからこそのリスクも。(243ページより)

外貨以外で根強い人気を維持しているのは、いうまでもなく不動産投資。マンションや戸建てのオーナーになり、それを他人に貸し出すことで家賃収入を得るという方法です。また、不動産の価格が購入時よりも高くなれば、転売することによって利益(キャピタルゲイン)を得ることも可能。これは長期的な利回りを前提としているため、立派な投資だと言えるそうです。

ただし不動産投資の場合は、立地条件や収益率を見抜く力、空室や家賃滞納、修繕・管理にかかるコストをコントロールする能力など、一定の知識やノウハウが必要になってくるものでもあります。

また、特定の物件を選んでの投資なのでリスク分散はなく、ほかの投資とくらべると投資金額の単位が莫大になるので、むしろ一極集中のリスキーな状況になりがちだといいます。

なお投資用不動産の購入には融資が通りやすく、レバレッジがかけやすいことがもてはやされたりしますが、逆に言えばそれは、大きな借金を抱えたハイリスク・ハイリターンの状態になるということ。そのため資産価値が暴落したり、空室が続いたりすれば、ただちに悲惨な状態になってしまうわけです。

「現物があるから安心」というロジックも怪しく、これは現物があるからこそリスキーだとも考えられると著者。地震・火災などの災害、建物内での事件や住人トラブルといった不可抗力のリスクは、通常の金融商品ではありえないわけです。

なお不動産への投資でリスク分散を実現したいのであれば、REIT(不動産投資信託)という商品も。ただしTOPIXなどのインデックス投信を選べば、その市場内のREITはすでにそこに組み込まれているもの。そのため、REITだけを単体で購入する必要もないだろうということです。(243ページより)

専業主婦からファイナンシャル・プランナーになったという経歴を持つだけに、主婦と専門家との2つの視点を持っていることが著者の強み。地に足がついた考え方ができるわけで、そのため本書の主張には説得力があるのです。着実にお金を貯めたい方は、参考にしてみるのもいいかもしれません。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年4月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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