ベストセラーを生む秘訣を明かす“書籍PRの専門家”

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進む、書籍PR!

『進む、書籍PR!』

著者
奥村知花 [著]
出版社
PHP研究所
ISBN
9784569837970
発売日
2018/03/29
価格
1,540円(税込)

ベストセラーを生む秘訣を明かす“書籍PRの専門家”

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 出版不況が叫ばれてどれほどが経つだろう。出版社や書店では、本を売るにはどうしたらいいのかという模索が続いている。だが一方では大ベストセラーが毎年現れる。その秘訣の一端がこの本では語られる。

 奥村知花は出版業界では珍しい書籍PRの専門家である。パブリシストと名乗って15年が経つ。

 彼女が売り込み、大ヒットした本としては、子どもたちを寝かしてしまう童話『おやすみ、ロジャー』が有名だ。夜、寝つきの悪い子どもたちに読み聞かせをする様子は、さまざまなマスコミに取り上げられ、その後は手にした人の口コミで売り上げを伸ばした。現在、92万部だというから驚く。

 パブリシティとは、放送、出版、ネットなどのメディアに、担当する本の存在を企画として売り込むこと。「広告」や「宣伝」のように露出に関して対価は支払わない。その本を適切な場所で紹介してもらうための橋渡し役である。

 そのために奥村は仕事を受ける前に、まず本になる前の原稿やゲラ(校正刷り)を読みこむ。どんなパブリシティが向いているか判断し、出版社のチームと打ち合わせに入る。売り込み先や番組の映像が浮かんで来たら、その本のイメージ作りの最初の段階はクリアしたことになる。

 大事なのはこの段階で料金と期間を含むサービス内容の確認をすること。あとで揉めることのないように、この作業は必ず行う。

 その後は担当者へ売り込み開始。メディア側の要求と著者や出版社側の希望を調整するのは腕の見せ所である。

 出版のサイクルは年々短くなっているように思う。旬の時は短いからこそパブリシティは効率的に行いたい。奥村の戦術「巻き込み仕事術」は出版に限らず非常に有効だ。チームワークを築くためのアプローチの仕方、相手の信頼を得るための話術は、新しく社会人となった人たちには多いに参考になるだろう。

新潮社 週刊新潮
2018年4月26日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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