「親父のルール」に翻弄されまくった男の初めての本音

レビュー

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父・横山やすし伝説

『父・横山やすし伝説』

著者
木村 一八 [著]
出版社
宝島社
ISBN
9784800281630
価格
1,490円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

「親父のルール」に翻弄されまくった男の初めての本音

[レビュアー] 吉田豪(書評家)

 木村一八は、父・横山やすしが作り出した独自すぎる「親父のルール」に翻弄されまくった男である。

 たとえば「『うそ』は自己防衛でつく場合がほとんど」で「『殺人』はやむにやまれぬ理由がある場合がほとんど」だから、「うちでは『殺人』より『うそ』のほうが、罪が重い」というのがそれだ。このルールを忠実に守っていた彼は、小学校高学年のとき父に女性のいるクラブに連れて行かれ、先にホテルに戻るように言われてベッドで寝ていると、隣のベッドで父がホステスとセックス開始! 「『お母さんには、ないしょやぞ』と口に人差し指を立てて言ってきた」ので、母からどこに行ってきたのか聞かれても答えることができず、これをきっかけに彼は母親に口答えするようになり、不良化していくのである。

 彼は芸能界デビューしてからも喧嘩と保護観察処分を繰り返し、30年前にタクシー運転手への傷害事件で少年院送りとなる。このときも実は「僕の中では正義が確立していた」らしいんだが、彼は「男はいい訳をするな!」という親父のルールを忠実に守り続けた。それが、いま初めてその裏側にあった事情をこの本で告白したわけなのだ。12年前、ボクがインタビューしたとき「絶対に書くなよ!」と言われたことが、ちゃんと活字化されている!

 なお、その時期、ボクは「木村一八が語る横山やすしの本を作らないか」と某出版社にオファーされて、打ち合わせ段階で流れたんだが、さらにその10年ぐらい前の、「ある出版社から、親父のことを書かないかと誘われた」「僕が語って、ライターがそれをまとめる語り下ろしの形での出版だった。しかし、僕の言葉を文章にしてくれるライターが、二人もノイローゼになってしまい、出版は中止。そのとき、僕も、自分の精神がまともでないことに気がついた」「その後、精神科のカウンセリングも受けた」というエピソードに戦慄! 危ないところだった!

新潮社 週刊新潮
2018年4月26日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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