『FUNGI 菌類小説選集 第2コロニー』 オリン・グレイ&シルヴィア・モレーノ=ガルシア編

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FUNGI――菌類小説選集 第IIコロニー

『FUNGI――菌類小説選集 第IIコロニー』

著者
オリン・グレイ [編]/シルヴィア・モレーノ=ガルシア [編]/野村芳夫 [訳]
出版社
Pヴァイン
ISBN
9784907276942
発売日
2018/03/28
価格
1,836円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『FUNGI 菌類小説選集 第2コロニー』 オリン・グレイ&シルヴィア・モレーノ=ガルシア編

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

 FUNGI(ファンギ)とはまた面妖なタイトルだが、本書トビラによるとその意味は、菌類、菌類界。バクテリア類・粘菌・カビ類・酵母菌類・キノコ類などねっとりと、副題に「第2コロニー」とあるように全二巻の下巻にあたる本書は、実はマタンゴ小説集である。上巻たる「第Iコロニー」の序文に、マタンゴに魅せられた編者ふたりが、よし、仲間の作家たちとマタンゴに想を得た短編小説集を作ろうと、それが本書刊行のきっかけとあれば、この経緯に世界のマタンゴ好きは我が意を得たりと拍手喝采である。

 マタンゴっていったいなんだ? そんな読者のためにご説明すれば、一九六三年の東宝の特撮怪奇映画『マタンゴ』である。監督はかの『ゴジラ』の本多猪四郎、そして特技監督は同じく円谷英二。英国怪奇幻想文学の匠(たくみ)W・H・ホジスンの短編小説「夜の声」を原案に日本SF黎明(れいめい)期を支えた福島正実と星新一が大胆に脚色。若者たちを乗せたヨットが無人島に漂着、食糧を求めて島の奇怪なキノコを食べたら、なんてこった、みんなキノコ人間になっちまった! そんな不気味にシュールな昔なつかし怪奇映画なのだが、初めてこの映画を観(み)た小学生の私は本気でビビった。あやうくキノコが食べられなくなるところだった。隠れた名作としてカルトな人気を誇るなんとも怪美にして妖異なこの映画が、海外の好きモノたちにもこんなに愛されていたとは!

 キノコやカビがあれこれと暴れまわるSFやホラーやファンタジーに怪奇幻想小説が「第2」だけで十二編。どれからどこから読んでもコワ楽しい。因(ちな)みにかつて日本でもマタンゴ小説アンソロジーの試みが。東雅夫編『怪獣文学大全』(河出文庫)はホジスンの原典に、福島正実による映画原作など五本のマタンゴ小説を収録。『FUNGI』と『怪獣文学大全』を読んで、そして映画を観れば、あなたも立派なキノコ人間になれる、かもしれない。野村芳夫訳。

 ◇Orrin Grey, Silvia Moreno―Garcia=作家。共に幻想、怪奇な作風の短編小説で知られる。

 Pヴァイン 1700円

読売新聞
2018年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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