『監視大国アメリカ』 アンドリュー・ガスリー・ファーガソン著

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監視大国アメリカ

『監視大国アメリカ』

著者
アンドリュー・ガスリー・ファーガソン [著]/大槻敦子 [訳]
出版社
原書房
ISBN
9784562054831
発売日
2018/02/26
価格
2,592円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『監視大国アメリカ』 アンドリュー・ガスリー・ファーガソン著

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

 犯罪の減少や抑止は多くの人が望むことだろう。だが、どのように取り組めばよいのか。本書の著者である米国の研究者は、これからの警察活動の中心はデータだと言う。

 犯罪情報、個人情報、位置情報……。膨大なデータを解析すると、自動車盗が起きそうな場所や次に撃たれそうな人を特定できる。

 本書で驚かされるのは、米国ではすでにこうしたデータ分析が実際に導入され始めていることだ。

 シカゴでは誰かが暴力に関わっていれば、その友人も含め、銃撃事件の被害者・加害者になる可能性があるリストに登録される。このリストに載った人たちには社会福祉士らが面会に訪れ、命を奪われる可能性があると人生の方向転換を促される。実際、2016年の母の日の週末、2日間で撃たれた51人の80%はこのリストで特定されていた。

 場所から犯罪を予測する利用法もある。ニュージャージー州ニューアークでは環境要因から犯罪を分析。違法薬物逮捕現場、放置不動産、レストランなど11種の要因から、銃撃事件が発生しやすいリスクを分析。リスクが高い場所に警官を多く向かわせたところ、対象地域での銃撃事件は35%減少したという。

 だが、こうしたデータによる予測型警察活動が完全なわけではない。過去のデータでは有色人種の比率が高いが、そこには社会経済的な要因もある。それを考慮せず、数字だけを根拠に「脅威」と判定すれば、犯罪予測は有色人種にとって不利に傾く可能性もある。そんな歪(ゆが)みを著者は「ブラックデータ」と懸念する。

 著者は予測型警察活動が広がることは認めつつ、データは不完全だと警告する。都市など広域での犯罪抑止にデータは有用だが、容疑者の判定などでデータに依存すると人間性などの要素を見失う可能性がある。

 SF映画のような時代を前に、データをどこまで信じ、どこまで利用するのか、考えざるをえない。大槻敦子訳。

 ◇Andrew Guthrie Ferguson=予測型警察活動、ビッグデータを利用した監視の専門家として知られる。

 原書房 2400円

読売新聞
2018年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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