『元号 年号から読み解く日本史』
- 著者
- 所 功 [著]/久禮 旦雄 [著]/吉野 健一 [著]
- 出版社
- 文藝春秋
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784166611560
- 発売日
- 2018/03/20
- 価格
- 1,100円(税込)
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『元号 年号から読み解く日本史』所功、久禮旦雄、吉野健一著
[レビュアー] 関厚夫(編集委員)
■古代と現代つなぐ「新国史」
元号や年号を体系的にあつかった書物は非常に少ない。
そのはずである。わが国における元号・年号史は、大化元(645)年という古代から現代に至る「歴代天皇記(紀)」や「日本通史」の性格を併せもつ。並の史家の手に負えるテーマではない。
本書の副題には「年号から読み解く日本史」とある。
「何と身の程知らずな」。そんな思いは共著者筆頭の名前をみて霧散した。『日本年号史大事典』(雄山閣)の編著者であり、皇室史の第一人者、所功・京都産業大学名誉教授だったからである。
さらに本書の共著者の2人はともに『日本年号史大事典』の執筆者である。いわば現時点における最強チームによる「元・年号日本史」への挑戦といえよう。
大宝元(701)年、「近現代の憲法にも匹敵する」という律令が施行され、それまで断続的に使用されるだけだった年号が制度化された。これによって「日出づる処」の「日本国」として名実ともに独立・統一国家であることの気概が国内外に示された-。
教科書は教えないが、本書が明かす「目からウロコ」の一例である。本書によって、日本史や漢字文化圏についての広範かつ深い知識と理解が手に入ることは論をまたないのだが、一点指摘しておきたい。本文の4割ほどの紙数が「幕末以降、現代まで」にあてられているのだ。
そこでは明治から大正、昭和の終戦を経て平成に至る国づくりと改元秘史がつづられている。また間接的ながら、新元号の出典は従来のように漢籍にとらわれることなく、十七条憲法や万葉集、古事記などの日本の古典も視野に-との提言もある。
元号と年号は同義語とされる。しかし、厳密に言えば、わが国の制度史上、江戸時代までは「年号」が公用に供され、「一世一元」が確立された明治以降、「元号」が公称となったという。
本書の表題のゆえんであろう。それは同時に「明治維新150年」であり、平成の終焉(しゅうえん)と新元号の施行のはざまに立つ「いま」、本書が求められるゆえんでもある。(文春新書・1000円+税)
評・関厚夫(編集局編集委員)