【児童書】『じてんしゃ がしゃがしゃ』かさいまり文、山本久美子絵

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じてんしゃ がしゃがしゃ

『じてんしゃ がしゃがしゃ』

著者
かさいまり [著]/山本久美子 [イラスト]
出版社
絵本塾出版
ISBN
9784864841306
発売日
2018/03/28
価格
1,540円(税込)

【児童書】『じてんしゃ がしゃがしゃ』かさいまり文、山本久美子絵

[レビュアー] 永井優子

■誰もが通過する人生の季節

 小さな体に合った自転車を買ってもらったとき、一人でどこへでも行ける気がした。夢中でこぐと、補助輪ががしゃがしゃ鳴って、心も体もはずむようだった。補助輪を外したのはいつだったろうか。後ろを押さえてもらって、家族総出の声援を受けた。できることが少しずつ増えていく子供時代は、なんと輝かしい時間だったことだろう。

 誕生日にお父さんに自転車を買ってもらった男の子、ゆうた。白く雲が刷(は)かれた青空、緑の草がなびく土手、補助輪があるからこわくないもん、「がしゃがしゃ すいすい」、ゆうたの自転車はどんどん進む。友達とも一緒に「がしゃがしゃ すいすい」。やがて、みんな補助輪を外すときが来る。仕事で遠いところに行ったお父さんとの約束で、ゆうたはなかなか補助輪を外すことができない。「よわむし」と言われても、じっと我慢して…。

 誰もが通過し、走り抜ける人生の季節。やがて大人になって、誰かを見守る立場になる。自転車を包む風の色のように、さわやかな一冊。(絵本塾出版・1400円+税)

 永井優子

産経新聞
2018年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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