『モリカズさんと私』 沖田修一、田村祥蔵、藤森武、山崎努著

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モリカズさんと私

『モリカズさんと私』

著者
沖田 修一 [著]/田村 祥蔵 [著]/藤森 武 [著]/山﨑 努 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163908083
発売日
2018/03/08
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『モリカズさんと私』 沖田修一、田村祥蔵、藤森武、山崎努著

[レビュアー] 戌井昭人(作家)

 熊谷守一は、明治十三年生まれの画家だ。東京美術学校に入学して画家生活をはじめるが、三〇歳のとき、実家の岐阜県に戻り、林業にたずさわる。この期間は殆(ほとん)ど絵を描いていない。六年後再び上京、画家生活をはじめる。

 結婚をして五人の子供に恵まれるが、絵が描けずに貧乏生活に突入、子供が肺炎になったときも医者に診せることができず死なせてしまうなど、若い頃の人生が壮絶だ。その後、困窮から抜け出したが、七六歳のときに脳梗塞(こうそく)で倒れ、以来二〇年間は自宅と庭から出ることなく、毎日、庭を観察して、絵を描く。八七歳のときに文化勲章に選ばれるが辞退する。このように、熊谷守一のユニークな晩年の生活を描いた映画「モリのいる場所」が公開される。本書はその副読本となっているが、読み応えもあり、彼の人間性を知ることができる。藤森武が撮った写真、庭に鬱蒼(うっそう)と茂る草木に同化している守一も印象的だ。さらに映画で守一を演じる山崎努の撮影日記もあり、真夏の撮影期間、俳優がどのようにして役を捉えていったのかを知ることができ、興味深く読むことができる。

 文芸春秋 1500円

読売新聞
2018年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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