<東北の本棚>多様な石仏の表情活写

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<東北の本棚>多様な石仏の表情活写

[レビュアー] 河北新報


『路傍の祈り』飯田晋[著]
自悠工房

 自然の中に静かにたたずむ石仏の数々を、アマチュアカメラマンの著者が季節の移ろいとともに捉えた写真集。亡くなった妻への鎮魂の意を込めて、2013~17年に全国で撮影した83枚を収録。石仏を見つめる著者の穏やかなまなざしが伝わってくる。
 山形県遊佐町の十六羅漢岩。日本海の荒波と潮風に耐え海を見守り続ける石仏は、力強い生へのパワーを感じさせる。宮城県松島町の瑞巌寺では、13年夏にライトアップされた石仏を撮った。暗闇に浮かび上がる青々とした木々と石仏が幻想的な雰囲気を醸し出す。
 赤い頭巾が印象的な福島県檜枝岐村の「六地蔵」や、京都市の三千院にある「わらしべ地蔵」、神奈川県鎌倉市の青蓮寺の地蔵など、かわいらしい表情を撮った作品もある。
 作品には友人の岩崎良晴氏が言葉を添える。「不安と畏れが 手を合わせていると だんだん消えていく不思議なパワー 紫陽花が包んでくれる」。米沢市内でアジサイと撮った1枚にはこう記されている。
 著者は「宝探しをしている感覚。季節や天気によって違う表情を見せる石仏を撮り続けたい」と話す。
 著者は1945年仙台市生まれ。東北学院大で写真部に在籍した。2015年に本格的に撮影を再開、本著が初の写真集。
 自悠工房022(225)5084=3240円。

河北新報
2018年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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