『逃げ出す勇気 自分で自分を傷つけてしまう前に』
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ブームの“逃げ本”役立つのはコレ
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
このゆうきゆうの『逃げ出す勇気』に、あの百田尚樹の『逃げる力』。そんな“逃げの書”ブームは新書以外でも起きていて、『逃げる勇気』『逃げる自由』『堂々と逃げる技術』『人生の9割は逃げていい。』その他いろいろ、全部平積みにした「逃げろ!」コーナーが本屋にあっていい勢いだわ。
ひとつのきっかけは『逃げるは恥だが役に立つ』のドラマ版のヒットだろうけど、考えてみりゃ本は昔っから現実からの逃避先。ただ、実用書は例外で、現実から逃げないことが前提のはずなのに、この分野でも“逃げ本”が目立ってきたのは、ちょと怖い。抑圧重圧束縛不自由などなどが強まり高まり増えてることの裏返しに思えちゃうのでね。
実際、『逃げ出す勇気』も世間だ組織だ他人だの圧迫強迫に疲れ果ててるアナタ向けのガイド。説かれてる逃げワザのそれぞれは、心理学・カウンセリング方面を齧(かじ)ってみた人なら覚えがあるかもしれないが、それをまとめて優しく、かつ易しく説いてもらえるのはありがたい。著者は東大医学部出の精神科医で、原作を手がけた心理学モノのマンガなど著書はすでに100冊以上。語る中身、語る技術ともに備わってる。
ワタシも一読、己の癇癖(かんぺき)&完璧主義を冷静に見つめ直せまして、その結果、逃げる技術にばかり長けた役人や逃げ出さない力だけ増した総理、そしてこんなオチで逃げる勇気にのみ富んだ自分まで許せるようにな……りは、しなかったけどね。