『さまよう民主主義』 スティーヴ・リチャーズ著

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さまよう民主主義 アウトサイダーの台頭は政党政治の終焉なのか

『さまよう民主主義 アウトサイダーの台頭は政党政治の終焉なのか』

著者
スティーヴ・リチャーズ [著]/高崎拓哉 [訳]
出版社
ハーパーコリンズ・ジャパン
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784596551245
発売日
2018/02/17
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『さまよう民主主義』 スティーヴ・リチャーズ著

[レビュアー] 三浦瑠麗(国際政治学者・東京大講師)

アウトサイダーの台頭

 欧米におけるアウトサイダーの躍進は、2016年の英国における欧州連合(EU)離脱の国民投票と米大統領選におけるトランプ氏当選でクライマックスを迎えた。はじめ、多くの識者はその躍進を反エリート主義の台頭としてしか説明できず、途方に暮れるばかりだったが、次第に、どこにアウトサイダーの台頭を可能にする要素があったのかを突き止めようとする試みがでてきた。本書はその試みの系譜に位置付けられる。政治解説者としてBBCで活躍してきた著者は、欧米でのアウトサイダーの台頭を、縦横無尽に平易な話し言葉で語ってくれる。

 ポピュリズムは一概に悪ではない。既存エリートによる政治が膠着化(こうちゃくか)した場合、人びとが変化を求めるのは当然だ。しかし、問題は、変化を求めて潰さなくても良い政治家を潰してしまう一方で、代わりに選んだアウトサイダーの候補が、政権に就いたときに本当に必要な政策を進めてくれるとは全く限らないことだ。

 本書は、左右のアウトサイダーの台頭を説明するとともに、左右のメインストリームの凋落(ちょうらく)を手厳しく分析する。常に権力に懐疑的なメディアが政治家を萎縮(いしゅく)させ、既存政党は支持層に気兼ねしてしまう。その結果、エリートの政治家は問題を正面から語ることを避け、曖昧な言葉に終始する。かと思えば、人びとの気持ちに寄り添っていない言葉を軽々に発してしまう。政策の観点からも、コミュニケーションの観点からも、既存政党が責められるべき点は多い。

 しかし、そこで本書は重要な教訓を提起する。メインストリームが萎縮したからこそ、アウトサイダーが入り込んできたのだと。人びとはなぜ、自分たちが選んだ政治家に不寛容で、すぐに引きずりおろそうとするのか。困難な課題が待ち受ける中で、万能な指導者など存在しない。政治家はいま一度、自らの政策とイデオロギーを見つめ直し、人びとに届く説明をすることが求められているのだと。高崎拓哉訳。

 ◇Steve Richards=英国で最も影響力のある政治解説者の一人。新聞など多くの媒体に政治コラムを寄稿。

 ハーパーコリンズ・ジャパン 2000円

読売新聞
2018年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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