「疲れない働き方」を実現する「食事」の習慣とは?

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「疲れない働き方」を実現する「食事」の習慣とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

Google流 疲れない働き方』(ピョートル・フェリークス・グジバチ著、SBクリエイティブ)の著者はポーランド出身。2000年の来日後は、モルガン・スタンレーを経てグーグルで実績を積み上げて来たという経歴の持ち主です(現在は独立し、2社を経営)。

以前、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法』をご紹介したことがあり、また「ライフハッカー [日本版]」でもその取り組みをご紹介しているので、ご存知の方も多いと思います。

ところで日本でのビジネス経験も豊富な著者は、日本のビジネスパーソンについて「疲れている気がします」と印象を述べています。しかも各国の生産性を比較してみると、日本はどちらかといえば低いほう。がんばっているのに結果が出ないので、心身ともの疲れるのも無理はないだろうというのです。

著者が以前働いていたグーグルも、実際の仕事については厳しい会社だといいます。しかしそのぶん、「疲れない働き方」については、会社として十分に注意を払っているというのです。つまり本書はそんな、著者がグーグルで見たこと、経験したことをベースに書かれているわけです。

本書ではグーグルで学んだ「疲れない働き方」と、今僕が日本の企業を見て感じている「日本の組織で疲れずに成果を上げていくにはどうしたらいいか」といったことをもとに、皆さんが明日からでも効果を実感できる考え方や方法を紹介していけたらと思っています。(「はじめに」より)

きょうは、実生活においてはなかなか意識する機会の少ないことに焦点を当てた第3章「確実に自分をチャージする食事・睡眠・運動の習慣」のなかから、「食事」の部分をクローズアップしてみたいと思います。

健康の土台となるのは食事

グーグルでは、社員が快適に働ける環境をつくることを非常に重視しているのだそうです。そして、その姿勢が端的に表れているのが「フードチーム」

たとえば社員は無料でカフェテリアを利用でき、好きなものを好きなだけ自分で選んで食べられるようになっているという話は有名ですが、単にそうしたサービスを実施しているだけではないというのです。

なぜならフードチームは、「どんな食べ物が人気なのか」「どういう順番で食べる傾向があるのか」など膨大なデータを集め、それらを軸に試行錯誤を重ね、社員の健康のためにさまざまな施策を打っているから。たとえばグーグルで出されている野菜はすべてがオーガニックですが、そうしたこともフードチームの取り組みのひとつ。

カフェテリアでいかに「よい食習慣」をつくるのか

最近は栄養学の研究が進み、「なにを食べれば健康的で高いパフォーマンスを出せるのか」がわかってきました。たとえば炭水化物を控えめにし、タンパク質と野菜をしっかりとるなど。

しかし健康によいということはわかっていても、自分の習慣はなかなか変えられないものでもあります。ついつい、好きなものをたくさん食べてしまうわけです。しかもすべて無料のカフェテリアだったら、食べすぎてしまうことは容易に想像できます。

そこでグーグル東京オフィスのカフェテリアでは、入口近くに栄養バランスについてのピラミッドを表示し、タンパク質や脂質、炭水化物をどういう割合でとれはいいのか一目でわかるようにしているのだといいます。

さらに入口近くには、野菜がたくさんとれるサラダバー、その後に肉や魚、ご飯、デザートという順序で食べ物を並べ、体によいメニューができるだけ自然に選ばれるように工夫しているのだそう。また、無料で使える自動販売機にも、できるだけ健康的な飲料を入れるようにしており、体によくない飲料は、いちばん目につく場所から外すようにしているのだとか。

「グーグルではおいしい食事を出すカフェテリアが無料で使える」という話はたびたび取り上げられますが、本当に注目すべきは、そこで使われている仕組みであり、その根本にある考え方なのだと著者はいいます。

・ 健康によい食事は、社員の満足度向上、そしてパフォーマンスアップにつながる

・ 健康によい食事をいちいち考えながら選んで撮るのは、頭を使うので大変

・ 健康的な食事が自然にとれるカフェテリアを車内に用意すれば、社員は食事に意識を払わなくてすむ

(103ページより)

このように、自分なりに健康的な食事を、無理なくとれる仕組みをつくることが大事だということ。(100ページより)

おなかが空いているときに食事を選ばない

こうした「よい食習慣をつくる仕組み」は、行動経済学にのっとったもの。行動経済学とは、身近な経済活動を心理学を交えつつ考察するものだそうです。そしてこの考え方は、私たちの食習慣の改善にも使えると著者はいいます。

たとえば、そのためのちょっとしたテクニックとして紹介されているのが、食事はできるだけ「おなかが減っているときに選ばない」というもの。

すごくおなかが減っているお昼に外に食べに出ると、「きょうはラーメンにして、餃子もつけよう」というようなことになってしまいがち。空腹時には冷静ではいられなくなるため、「これが健康にいい」「食べすぎはよくない」とわかっていても、なかなか実行に移せないわけです。

そこで、それを避けるためには、空腹時に食事のことを考えないようにする必要があるというのです。

たとえば昼食をコンビニで買うという場合、おなかが空いていたら、目についたものを手当たり次第に買ってしまいたくなるものです。

しかし、だとしたら、おなかがいっぱいの状態にある朝食後に昼食を買えばいいという発想。おなかがいっぱいであれば、冷静な状態で、健康にい食べ物をしっかり選ぶことができるわけです。

精神力で誘惑に打ち勝つのは大変なので、「そうならないための仕組み」を普段からつくっておけばいいということです。(104ページより)

栄養バランスは1食単位で考えなくていい

とはいえ仕事が忙しくなると、毎回バランスのとれた食事をすることが難しくもなります。「忙しいから」と、コンビニのおにぎりやサンドイッチで済ませたりしてしまうわけです。外食となるとどうしても炭水化物が多くなってしまいますし、栄養バランスまで考えている余裕はなかなか持てないものです。

そこで著者は、食事の栄養バランスを1食単位で考えないようにしているのだそうです。忙しくて炭水化物が多めの食事をしてしまったら、次にとる食事で魚や肉、野菜をしっかり食べてバランスを取り戻せばいいという考え方。

僕は、夜に会食することが多いこともあって、食事は1日4~5回に分けてとっています。昼食にがっつりと定食を1回食べるのではなく、野菜だけ、肉だけと軽い食事に分ける。 忙しくて、コンビニで買ったおにぎりしか食べる暇がなければ、次の食事のタイミングでサラダだけを食べる。最近は、どのコンビニでも燻製のサラダチキンを置くようになっていますが、あれは手軽にタンパク質がとれていいですね。これならコンビニだけでも、バランスはとれそうです。(108ページより)

実際に、間食も含めて3~4時間ごとに定期的に食事をとることで、血糖値が一定になるというデータもあるのだといいます。著者もグーグル時代にこの1日4~5食を実践し、ベストな体重を維持してきたのだそうです。

「急いでいるから、体にはよくなさそうだけど、ファストフードのハンバーガーにするか」と考えるのではなく、著者のように、何回かに食事を分けてとるべきかもしれません。

なお、このことに関連し、本書では脳の働きをよくするための栄養素が紹介されています。

・ ブドウ糖…野菜・豆・全粒粉など

・ 必須脂肪酸…サンマなどの青魚に含まれるオメガ3、植物油に含まれるオメガ6など

・ リン脂質…大豆食品・鶏卵など

・ アミノ酸…肉・魚・豆類に含まれるタンパク質など

・ ビタミン・ミネラル…ビタミンは野菜、特に緑黄色野菜、ミネラルは海藻やきのこ類によく含まれていますが、その種類が多いので、さまざまな食品をとるようにするとよいそうです。

(109ページより)

参考にしてみてはいかがでしょうか?(106ページより)

集中しやすい環境のつくり方、エネルギーの利用法、組織のあり方など、「疲れない働き方」を実践できるように、他にもさまざまな角度から考察がなされています。「ちっとも疲れがとれない」と悩んでいる方は、ぜひ読んでみてください。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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