夫婦円満へのヒントが満載 田房永子――『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』水谷さるころ

レビュー

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目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで

『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』

著者
水谷 さるころ [著]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/コミックス・劇画
ISBN
9784103518112
発売日
2018/04/26
価格
1,080円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

夫婦円満へのヒントが満載

[レビュアー] 田房永子(漫画家)

 整理収納アドバイザーという資格を持った人が、自宅にお客さんを呼んで収納術を見せてくれる、ティータイムセミナーというのがあります。この春小学校に入る長女のランドセルの置き位置は家のどこにするのが一番いいのか知りたくて、先日、参加しました。猛烈すぎる程に片付いているおうちの各部屋を見て回り「このように収納してます」「上着をかけるハンガーラックはこのように……」と細かく説明してくれると、不思議なことに、それだけで自分の家の問題点がみるみる分かってきたんです。自分ちと間取りはぜんぜん違うのに、他人の家を丁寧に解説してもらうだけで「なるほど、うちでランドセルを置く場所は玄関の横の部屋だ!」と、いきなり分かっちゃうんですよね。

 その上で、水谷さるころさんの『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』は、「夫婦関係のティータイムセミナー」でした。

 読みやすく面白いコミックエッセイであるに留まらず、さるころさん夫婦の関係やお金、家事、育児の事情が詳細に解説されているので、読んでるだけで「なるほどうちってここがアレなんだわ~」と分かってくるんです。

 さるころさんと同じで、うちも夫婦ツーオペ育児。両方の親とか他に頼る人がいないから、去年二人目が生まれて1年間は、「どっちかが倒れた時点で即、生活崩壊」という緊張がビッチビチに張り詰めていたため、お互いに不満があってもちょっとのことくらいは大目に見ることができ、争いのない穏やかな月日を過ごしました。

 だけど1歳になってから急にゴングが鳴り響くようになりました。保育園が無事に決まった(申請はさるころさんちと同じ私が一人でやってノイローゼになるほど大変だった)あたりからちょっとしたゆとりが生まれて、そこからは勢いよく出るホースの如く夫婦間のやりとりが乱雑になりました。4月になった今は上の子が小学校に入学して、やることが多すぎて夫婦間はMAXでギスギスしている真っただ中です。

 そんな時に読んだこのマンガ。大切……、夫婦は会話が一番大切! さるころさんちはそれが軸に回っています。

 特に感動したのはさるころさんの「リピートアフターミー」です。持論なんですが、人間って結局みんな「納得したい」で生きてると思うんですよね。街で怒ってるおじさんとか、クレーマーとかオリンピックのアスリートも受験生も、その原動力は「納得したい」だけだと思う。言い換えてみたら、人間は納得さえできればオールOKな生き物だと思います。理不尽なことがあっても、納得できれば心は晴れる。

 夫の言動にイラつくのも「納得ができない」からで、納得できるフォローをしてくれればこっちもニコニコなわけです。だけどそれを「夫に分かるように伝えて、納得できる言動をしてもらう」というのがものすごく難しい。さるころさんはそこに果敢に挑むチャレンジャーです。

「夫がこれを言ってくれれば納得できる」セリフを、自分で言う。そして「リピートアフターミー!」。気迫に押された夫がその通り唱える。夫の口から夫の声で再生されたセリフを耳に入れることで、一時的にではあっても自分の体が納得する。そうやっていったん、その問題を解決させることで、今やらなければならない仕事にとりかかれるわけです。さるころさんが提示するセリフも、正しさのあるものだから、そこを軸にしっかり夫婦関係が回り出す。とてつもなくシンプルで合理的!

 自分ちを含め一般的に、揉めてる夫婦って、そこがお互いに伝えられないんですよね。私がいま夫にモヤモヤしてるのは姑のこと。嫌なことをされるわけじゃないのに、なぜか姑と同じ空間にいると居心地が悪い。「一体これはなんだろう?」と考えてみたところ、姑が来ると、若干ウキウキした感じでおもてなしをする夫を見てイライラしているんだとさっき気づきました。「私のことは雑に扱うくせに!」という怒り、「私にも優しくおもてなししてよ!」という納得のできなさ。いわゆる嫉妬。

 でも私も夫を雑に扱ってるから、何も言えねえ。けど、おそらくそれをうまい具合に伝えられたら、このギクシャクした感じもおさまる気がする。『目指せ! 夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』というティータイムセミナーで、分かってきましたよ!

新潮社 波
2018年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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