穂村弘×堀本裕樹・対談 対決! 短歌と俳句公開勝負〈『短歌と俳句の五十番勝負』刊行記念〉

対談・鼎談

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短歌と俳句の五十番勝負

『短歌と俳句の五十番勝負』

著者
穂村 弘 [著]/堀本 裕樹 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学詩歌
ISBN
9784104574032
発売日
2018/04/26
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

〈『短歌と俳句の五十番勝負』刊行記念トークイベント〉穂村弘×堀本裕樹/対決! 短歌と俳句公開勝負

[文] 新潮社

堀本裕樹×穂村弘
堀本裕樹(俳人)×穂村弘(歌人)

人気の歌人と俳人が、50のお題で新作勝負。
その技を堪能できる本の観光を記念して、プレイイベントを行いました。短歌と俳句、それぞれの魅力を存分にお楽しみください。

 ***

――みなさま、お集まりくださいまして、ありがとうございます。穂村弘さん、堀本裕樹さんです。今日は、「対決! 短歌と俳句 公開勝負」ということで、闘いの装束、忍者に扮していただきました。ポーズをとっていただきましょう。今日は本の表紙や帯のために、イベント前に、お二人の忍者画像を撮影しました。……それではよろしくお願いします。

堀本 重いですね、鎖鎌って。

穂村 この姿でスタジオで闘ったのですが、大変疲れました。

堀本 三時間くらい撮影しましたね。

穂村 忍者は重心が高くてはいけないと言われて、腰を落とすので、足がガクガクになりました。

堀本 短歌と俳句の対決、ということで闘ってみましたが、穂村さんは忍者になりたかったんですよね。

穂村 僕は忍者世代で、「伊賀の影丸」とか「サスケ」とか読んでいましたからね。忍者は、武士に比べてファンタスティックですよね。

堀本 確かにそうですね。今日は会場の皆様に勝負の判定をしていただき、この装束で二人で語ります。

――《波》で連載していた「俳句と短歌の待ち合わせ」では、さまざまな出題者にお題をいただいて、お二人に新作を作っていただきました。そのうちのいくつかの短歌と俳句をここで紹介しまして、どちらの勝ちか、会場の皆様にお聞きしたいと思います。スクリーンにお題と出題者、そして短歌と俳句を並べて映し出します。それぞれ、こちらが勝ち! と思う方に挙手をお願いします。

又吉直樹「唾」

堀本裕樹氏
堀本裕樹氏

穂村 自作を自分で読みましょう。最初は又吉直樹さん出題、「唾」。

文字に唾垂らしてこするなんとなくこれでも消えるような気がして

……という美しい作品です。

堀本 こちらは、

青き踏む唾棄すべきことこなごなに

という句です。

――勝負!(観客挙手)短歌45、俳句36。

堀本 負けました。

穂村 これは、季語がわからないんだと思います。僕も「青き踏む」が季語だとわからなかった。

堀本 春の季語で「踏青」とも言います。野山を歩く、散策する、ということですね。古くは陰暦の三月三日に中国の習俗で、野山を散策して宴を催すというのがあったということで、それを踏まえての季語です。今ではピクニックとか軽い意味でも使います。ちょっと特殊な季語かもしれないですね。

穂村 唾棄すべきこと、のイメージって、何かあるんですか。

堀本 僕は和歌山出身なんですが、東京に暮らしていて、何かいろんな汚れがつくような……。

穂村 「木綿のハンカチーフ」か。

堀本 それ、よくわからないです。

穂村 僕らの世代でないと……太田裕美の。YouTubeで聴いてみて。「都会の絵の具に染まらないで帰って♪」

堀本 あ、知ってます、それね。

 和歌山に帰って紀伊風土記の丘に登って風に吹かれたりすると、紀ノ川が一望できて、すごく気持ちがいいんです。そこには野原もあって、まさに、「青き踏む」。唾は、唾棄という熟語で入れました。

穂村弘氏
穂村弘氏

穂村 不思議な季語ですね。俳人はみんな知っているの? この季語。知っていた人いますか? あ、俳人の方々がいらしていますね。会場からも、何か聞いたらいいかもしれない。

堀本 ざっくばらんに話していただけたら、聞きたいですね。

穂村 自分の短歌のこと、ちょっと言ってもいいですか。こういうちょっと汚いことする男子っていますよね、汚いのが悪いんじゃなくて、考えが甘い。唾で何とかなるんじゃないか……僕はいまもそうなんだけど、性格が。たとえば、何か食べ物をこぼすと、だめだとわかっていても、こすってしまう。繊維がだめになって汚れは落ちず、服は傷むのに、やってしまう。そういうところをすごく気にしているんだけど、直せない。子供の頃からやってしまう。

堀本 絶対消えないですけどね。

穂村 でも直せないんですよ(笑)。

堀本 では、次に。出題は写真家のアラーキーです。

新潮社 波
2018年5月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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