【見逃していませんか?この本】贔屓のチーム以外の選手も好きになる一冊/カネシゲタカシ編『みんなのしあわせになるプロ野球』

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みんなのしあわせになるプロ野球 ファンとっておきの泣ける・笑えるエピソード集

『みんなのしあわせになるプロ野球 ファンとっておきの泣ける・笑えるエピソード集』

著者
カネシゲ タカシ [編集]
出版社
講談社
ジャンル
芸術・生活/体育・スポーツ
ISBN
9784062210683
発売日
2018/04/27
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【見逃していませんか?この本】贔屓のチーム以外の選手も好きになる一冊/カネシゲタカシ編『みんなのしあわせになるプロ野球』

[レビュアー] 労働新聞社

野球好きなら誰もが1つや2つは持っているであろう泣ける・笑えるエピソードを集めたのが本書だ。世の中に、“プロ野球選手が主役”のエピソードは星の数ほどあるが、“ファンが主役”のエピソードは?――その観点でいえば、おそらく前例のない書籍といえよう。

出てくるのは必ずしも有名選手にまつわるものばかりではない。思いのほか身近な話題で溢れている。

泣けるエピソードでは、ベーブ・ルースのホームランが病気の少年を勇気付けた有名なエピソードによく似た実話や、1本のヒットで生きる希望を見出した話などを収める。なかには、泣ける話なのに義母が絡むオチが付くものもあるが、そこはご愛敬。

一方の笑えるエピソードは、阪神優勝に便乗したセールの件や、ある大物プロ野球選手を結果的に草野球に誘ってしまった失敗談、「あの頃のパリーグ」を象徴するような川崎球場でのロッテ・初芝選手への掛け声の話などを載せた。

以前本欄で紹介した「みんなのあるあるプロ野球」や「みんなのプロ野球川柳」の派生シリーズ本に位置付けられる。今回は企画会議を、編者が出演するユーストリームを通じて実施。結果、出来上がった本はより「みんなの」感が高まった。あえて後書きを付けず、愛娘へ「野球には失敗がない」という考えを根付かせるなどして、見事ディープな野球好きに育て上げたエピソードを巻末に持ってきたところは、なんとも粋な計らいだ。

逸話の数々は、贔屓のチーム以外の選手も好きになるような代物ばかり。より野球そのものを好きになる一冊で、「これは『ファン』から『プロ野球』への、ラブレターです」という編者の言葉は、真にこの本を象徴する一文だ。

労働新聞
2018年5月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

労働新聞社

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