【気になる!】文庫 『陸軍派閥 その発生と軍人相互のダイナミズム』
[レビュアー] 産経新聞社
終戦時人員、約550万人。旧陸軍は日本史上空前の官僚機構だった。そのエリート軍人はどんなキャリアパスで昇進または失脚し、組織としてどう動いたのか。本書は具体的な人間関係に着目し、陸軍運営の実態を追究する。
長州閥など地域閥の時代を経て、大正後期に個々の選択による「派」が芽生えた。そこに陸士の期、兵科閥、陸大卒業の有無、閨閥(けいばつ)などさまざまな要素が加わり複雑な力学が生まれる。問題児、石原莞爾(かんじ)は誰の力で地方の連隊長から要職中の要職である参謀本部作戦課長に就けたのか。瀬島龍三はなぜ終戦直前に中央から関東軍に転出したのか。現代の組織にも通じる、人事の裏を読む論考が満載だ。(藤井非三四著、光人社NF文庫・840円+税)