『TRICK』を手がけた「プロの素人」の仕事術

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

素人力

『素人力』

著者
長坂信人 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784334043476
発売日
2018/04/18
価格
842円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『TRICK』を手がけた「プロの素人」の仕事術

[レビュアー] 碓井広義(上智大学文学部新聞学科教授)

 オフィスクレッシェンドという社名は知らなくても、この制作会社が手がけてきた『20世紀少年』(堤幸彦監督)、『TRICK』(同)、『モテキ』(大根仁監督)、『JIN-仁-』(平川雄一朗監督)といった映画やドラマのヒット作を見た人は多いのではないか。

 同社を率いる長坂信人は、秋元康氏との縁で「素人プロデューサーを経て素人社長となった」と言うが、それだけで24年も会社経営ができるはずもない。初の著書『素人力 エンタメビジネスのトリック?!』は、いわば「プロの素人」が悪戦苦闘しながら見つけた仕事術や、先輩・恩師から学んだことを伝える一冊だ。

 仕事の上では「偶然は必然」と信じ、運を見逃さないためにアンテナを立て、出会った人を大事にする。しかも「最後まで人の話を聞く姿勢」を忘れない。本気の相槌とリアクションを武器に、自己主張の権化たる監督たちとも臆することなく渡り合ってきた。

 また力説するのが代案の大切さだ。何かを提案し、否定されたときに「それなら、こちらはどうですか」と即座に出せること。そんな「代案力」を培うのはひとえに経験だと言い切る。経験を伴った知識は強く、知識の集積が知恵を生む。この知恵こそがアイデアであり、代案の源泉なのだ。さらに知恵を発揮するためには「妄想」や「想像」という名の燃料も必要だと。

 本書の随所に登場する普遍的な「ものの見方」は、エンタメ業界を超えた多くのヒントを含んでいる。

新潮社 週刊新潮
2018年5月31日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加