『時代を語る 林忠彦の仕事』 林忠彦著

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時代を語る 林忠彦の仕事

『時代を語る 林忠彦の仕事』

著者
林忠彦 [著]
出版社
光村推古書院
ISBN
9784838105748
発売日
2018/04/03
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『時代を語る 林忠彦の仕事』 林忠彦著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 銀座のバーのスツールの上であぐらをかき、はにかんだような笑みを浮かべて誰かと語らう――あの有名な太宰治の姿を撮ったカメラマンが林忠彦である。右の写真は193ページ、同じバーでくつろぐ織田作之助だ。茶目っぽい笑顔から、撮影者への親しみが伝わってくる。本書の第四章「文士の時代」には戦後文壇を彩ったスター作家の肖像がまとめられていて、ページをめくると胸が躍ります。

 太宰の写真があまりにも印象的なので、林忠彦といえば肖像写真の専門家のように思い込んでいたのだけれど、本書でその仕事を一望し、大いに認識を改めた。レンズを通した繊細で雄弁な現代史の記録者だったのだ。第一章「戦中のドキュメント」、第二章「戦後日本の歩み」のモノクロ写真に写る人びとの表情の豊かさ、若者の瞳の涼やかさ。第六章「物語る風景」の一枚一枚が切り取るこの国の自然の静謐(せいひつ)さ、神々しさ。見応え充分の一冊だ。

 光村推古書院 3800円

読売新聞
2018年5月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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