『科学のミカタ』 元村有希子著

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3
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科学のミカタ

『科学のミカタ』

著者
元村有希子 毎日新聞科学環境部 [著]
出版社
毎日新聞出版
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784620325026
発売日
2018/03/26
価格
1,620円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『科学のミカタ』 元村有希子著

[レビュアー] 加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

遠くて近き最新トピック

 読書は、書き手と読み手の勝負だ。私は読書委員だ。著者の罠(わな)にかかってなるものか。そう身構えて読む。が、この本には見事に一本取られた。

 本書は、科学の最新のトピックの数々を紹介するエッセーである。冒頭にいう。「2017年秋、ある日の明け方のことである。ある人物が私の夢枕に立った」

 なぜか清少納言だった。科学記者である著者は奇縁を感じ、清少納言のエッセー集『枕草子』の「ものはづけ」の趣向にならい、科学の話題をあれこれ軽妙に語る。

 「こころときめきするもの」では、元素のニホニウムや、はやぶさ2、地層のチバニアンなど、わくわくする話。「すさまじきもの」では、トランプ大統領のパリ協定離脱宣言や、核のごみ、環境危機時計など、あきれる話。「おぼつかなきもの」は、ゲノム編集やAIなど、気がかりな話。「とくゆかしきもの」は、首都直下地震やロボット、都市鉱山など、もっと知りたい話。

 たしかに面白い。私のような超文系人間もさくさく読める。が、銀ブラにつきあわされてショーウィンドーめぐりをするような感もある。

 それが一転するのが、最終章「近うて遠きもの、遠くて近きもの」だ。著者はがんの話題で、自分の体験を赤裸々に語る。父ががんで亡くなる。半年後、自分も直腸がんが見つかり、手術を受ける。平均寿命のデータを見て「あと38年も生きるのか私は」と考え込む。子孫も残さず生殖年齢も過ぎた独身の自分は、地球の資源を使って生きていいのか。著者は、進化論の「血縁選択」の考え方から、生きる勇気を得る。兵隊アリや働きバチは、自分は子孫を残さず、他個体の世話ばかりする。なぜか。その合理性を科学的に説明するのが「血縁選択」の理論だ。

 一見、遠くにある科学は、身近な問題とつながっている。科学の見方は人生の味方。科学リテラシーの必要性を、すんなり納得させられた。

 ◇もとむら・ゆきこ=1966年生まれ。89年毎日新聞社入社、2017年に科学環境部長。著書に『理系思考』など。

 毎日新聞出版 1500円

読売新聞
2018年6月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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