<東北の本棚>理不尽な戦争の末、迫害

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<東北の本棚>理不尽な戦争の末、迫害

[レビュアー] 河北新報

 今年は明治維新から150年に当たり、政府などは各地で記念イベントを展開している。一方、東北にとっては戊辰戦争から150年の節目であり、この戦争で起きたさまざまな問題を検証すべきだとの機運が高まっている。
 本書もそうした視点からの一冊で、郡山市在住の歴史作家と、江戸時代が専門の歴史研究家の2人による対談が中心。副題の「戊辰戦争の謝罪なしに、日本の融和はない」が示す通り、維新称賛への違和感や、戦争で「賊軍」の汚名を背負わされた東北が蔑視策で迫害された歴史を広く知らしめたいとの思いがあふれている。
 対談では、幕末の動乱期に会津藩が薩摩、長州両藩主体の明治新政府から理不尽な戦争を仕掛けられ、東北全体を巻き込む戦いへと発展した経緯を振り返る。薩長が生ぬるい改革では日本が結局、幕府中心に戻ってしまうとの危機意識を持っていた点や、会津藩が幕府から京都守護職を押し付けられたことが戊辰戦争への道につながったことを解き明かす。
 新政府に対抗するため東北諸藩が組んだ奥羽越列藩同盟がなぜ敗れたのか、という分析が興味深い。「戦争が回避できなかったのは会津藩の交渉力不足」「白河口の戦いの大一番に、戦闘経験が皆無の軍事総督を据えたのが間違い」と東北側の自己反省が冷静に語られる。「会津藩は農民に過酷な税を課したので、戦争時に農民は協力しなかった」といった、東北側に都合の悪い話にも遠慮なく切り込み、小気味よい。
 「会津と長州の和解はまだ困難」とする本書の姿勢は、人によってはかたくなに感じるかもしれない。しかしそれだけ深い断絶がなお横たわることもまた事実である。
 著者の星氏は歴史作家で1935年、仙台市生まれ。著書に「奥羽越列藩同盟」など。安藤氏は歴史研究家で65年、千葉県生まれ。文学博士。著書に「西郷どんの真実」など。
 文芸社03(5369)3060=1620円。

河北新報
2018年6月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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