儒教で炙り出すエセ保守・エセ伝統

レビュー

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天皇と儒教思想

『天皇と儒教思想』

著者
小島毅 [著]
出版社
光文社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784334043544
発売日
2018/05/17
価格
929円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

儒教で炙り出すエセ保守・エセ伝統

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 お気に入りの呑み屋の常連にひとり、お茶目なオッサンがいて、日大アメフト騒動なら監督の肩ばっか持つし、モリカケ問題なら最初っから政権の味方。盃が進めば、ニッポン凄い・デントー守れ・バイコクド出ていけの繰り言が始まる。

 他の客にも迷惑ゆえ、「またメイジ真理教の発作ですか?」その他いろいろ、ツッコミ入れちゃ相手してるんですが、オッサンのこの1年ほどの定番ネタで、聞かされるたび困ってたのが、韓国や中国が駄目なのは儒教のせいという、ケント・ギルバートあたりの受け売り。コッチもろくに知らないからさ、儒教なんて。

 だから嬉しかったんですよ、この『天皇と儒教思想』に出くわしたときは。小島毅は中国思想史の研究者にして『父が子に語る近現代史』や『靖国史観』の書き手。面倒至極な儒教のあれこれを懇切丁寧に説いてくれたうえで、ニッポンのデントーのかなりの部分がメイジあたりに儒教頼みで仕立てられたことまで明かしてくれるから、今度またオッサンにお酌するときに言える、「ニッポンが駄目なのも儒教のせいですかね」。

 ま、実はワタシ、新書の儒教講義を理解しきった自信はまるでない。委細は飛ばし読み、エセ保守の化けの皮の剥がし方だけ拾い読みしてもオッサン論破には役立ちます。でも、長さクドさを読者に詫びながら儒教を広く深く濃く語る著者の声に耳を傾けていると、気づかされるのは今、デントーを振りかざす皆様の狭さ浅さ薄さでした。

新潮社 週刊新潮
2018年6月14日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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