『ロミイの代辯』 寺山修司著

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ロミイの代辯

『ロミイの代辯』

著者
寺山修司 [著]/堀江秀史 [編集]
出版社
幻戯書房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784864881463
発売日
2018/04/24
価格
4,104円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『ロミイの代辯』 寺山修司著

[レビュアー] 土方正志(出版社「荒蝦夷」代表)

甦る乱反射の魅力

 寺山修司が没して三五年だそうである。そのころ大学生だった私にとって、寺山は困った存在だった。まずは角川文庫の作品群。林静一描く乙女なカバーにピンクの背色のちょっとアブない人生論や青春論、かと思えばシブい競馬エッセーには無頼な匂いが漂い、著者をテレビで見かければ怪しげな東北訛(なまり)、さらに面妖な劇団「天井桟敷」に、映画もまたなんとも(私がはじめて映画館で観(み)た寺山映画は『上海異人娼館』だった)。さらに土俗の気配も濃厚に、その存在の眩(まばゆ)いばかりの乱反射に圧倒されて、同時にこれはなんだと幻惑され困惑もした。

 没後、寺山はさまざまに評され、論じられ、分析され、解読・解説された。私も東北のある大学が刊行した寺山本を編集した。読むうちに編むうちに、乱反射は次第に収まり落ち着いた……のはいいのだが、結果、寺山の少しく隠微でうしろめたくもヤンチャに華やかな、あの乱反射の不思議な魅力をいつしか見失っていた。

 本書はその魅力を甦(よみがえ)らせてくれた。単行本未収録の小説、エッセー、ルポ、短歌、座談会が四六篇(へん)。全盛期のインタビューもある。わくわくするのは掲載誌(『マンハント』『短歌研究』『アサヒグラフ』等々)の頁(ページ)の再録図版や寺山その人の手になる写真。一九六〇年代の雑誌の実験精神と自由闊達(かったつ)で野放図なエネルギーが炸裂(さくれつ)する。同時代のジャンルを超えた表現者たちとの関係性に注目した編者・堀江秀史の論考や解説も混沌(こんとん)たる時代の熱気を伝えて、たとえば寺山の猥雑(わいざつ)な詩を河野典生が朗読する会場に、植草甚一、都筑道夫、大藪春彦、大橋巨泉、淀川長治、秋山庄太郎がいる。

 やはり単行本未収録作を含む『時をめぐる幻想』(東京美術)も出た。寺山の「時」に関する掌編に旬のアーティストたちの挿画を配した豪華な一冊である。かつて寺山の乱反射に魅せられたあなたなら、この二冊、きっと楽しめる。もちろん寺山初体験の読者にもオススメだ。

 ◇てらやま・しゅうじ=1935~83年。詩、演劇、小説など幅広く活躍。著書に『書を捨てよ、町へ出よう』など。

 幻戯書房 3800円

読売新聞
2018年6月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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