『水銀のゆらぐ言』 柿沼裕朋著

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水銀のゆらぐ言

『水銀のゆらぐ言』

著者
柿沼裕朋 [著]
出版社
国書刊行会
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784336062635
発売日
2018/04/20
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『水銀のゆらぐ言』 柿沼裕朋著

[レビュアー] 岸本佐知子(翻訳家)

 コラージュから着想された物語、物語から生まれたコラージュが、見開きの左右に並ぶ。百年に一度だけ頁(ページ)がめくられる本、言葉で築かれた楼、溶けて水になる言葉など、物語の基点となるのはつねに言葉で、そこでは言葉は質量や触感をともなう物質のように描かれる。

 「ことばのかけら」という物語では、ひらがなの<かけら>が漢字の世界に入って<欠片(かけら)>となり、ルビー色したルビの<かけら>を道連れに数々の冒険をする。漢字をたらふく食べて<欠>が取れて<片>となり、賭場でルビの<カタ>を“かた”に入れてひと儲(もう)けし、かと思えば鏡で体が反転して<版>となり、そこから分身の<片>がたくさん生まれ……と、漢字のビジュアルで遊ぶ洒落(しゃれ)っ気は多和田葉子の小説に通じる面白さがある。眺めても読んでも楽しい、大人のための童話集だ。

 国書刊行会 2000円

読売新聞
2018年6月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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