『週刊文春「シネマチャート」全記録』 週刊文春編

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

週刊文春「シネマチャート」全記録

『週刊文春「シネマチャート」全記録』

著者
週刊文春 [編集]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166611690
発売日
2018/05/18
価格
993円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『週刊文春「シネマチャート」全記録』 週刊文春編

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

映画談議を促す1冊

 週刊文春の「シネマチャート」は、一九七七年に始まった映画評だ。毎週、複数の評者が新作映画に☆をつけて評価する(満点は二〇〇三年までは☆三つ、以降は☆五つ)。四十年間で四千本を超える映画に、二十九人の評者がつけたこの星取表を集計し、洋画のベスト二〇〇、邦画のベスト五〇を選出してみたらどうなるか。それが本書である。

 評価の定まらない近作は不利で、古い名画にアドバンテージがある「オールタイムベストテン」アンケートなどとは違い、過去四十年内の作品が完全に同列で競っているところがまずユニークだ。それでも上位に食い込む二十世紀の名画もあれば、近年のヒット作やオスカー受賞作の健闘もある。同点・同順位の作品が多いので、ランキングとしては大らかだけど、その分「これとこれが同点?」という意外性を楽しめるのもいい。ページをめくる前に、自分のベストテンを予想しておくのをお勧めします。

 歴代の評者の顔ぶれには、四十年の時の流れが映っている。池波正太郎に田中小実昌、立川談志の名前が懐かしい。毎週新作を観(み)て評を書くのは、映画好きには羨ましい仕事のように見えるけれど、いつでも楽しいばかりではないはずだ。長く評者を務めている中野翠さんと芝山幹郎さんがこのランキングを見渡し、多くの作品や監督について語りつつ、「疲れるけど飽きない」「映画は最高ですよ。それだけに、つまらない映画を観ると激しい怒りに駆られてしまうんです」なんて本音もぽろり。お疲れ様でございます。

 個人的には、同点一位が十作ある洋画はともかく(この十作が見事にてんでんばらばらで面白い)、邦画の一位には驚いた。う~ん、そうなのか。今現在の私の一位は『アウトレイジ 最終章』なのですが。あと、リメイク版の『十三人の刺客』はどこに入ってる? という感じで、本書を挟んで誰かと映画談議したくなること請け合いであります。

 ◇しゅうかんぶんしゅん=1959年創刊の週刊誌。名物映画評「シネマチャート」は77年6月23日号でスタート。

 文春新書 920円

読売新聞
2018年6月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加