<東北の本棚>発達期の脳影響を解析

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スマホが学力を破壊する

『スマホが学力を破壊する』

著者
川島 隆太 [著]
出版社
集英社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784087210248
発売日
2018/03/16
価格
814円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>発達期の脳影響を解析

[レビュアー] 河北新報

 スマートフォンは2010年以降急速に普及し、今や多くの人の生活に欠かせない道具となった。便利なことは確かだが、子どもの学力に及ぼす影響はあまり知られていない。本書は「脳トレ」で知られる東北大加齢医学研究所長の著者が、仙台市の児童生徒約7万人を対象に行った調査結果などを基に、スマホ使用と学力の因果関係を真正面から解析した一冊だ。
 冒頭、一つのグラフを提示する。13年度の中学生の学力検査と平日の生活習慣に関するアンケートの結果。そこからは携帯・スマホを使用する時間が長いほど、成績が悪くなる傾向が読み取れる。2時間以上勉強していても携帯・スマホを3時間以上使う子どもは、ほとんど勉強しないが携帯・スマホを使わない子どもに負けてしまっている。
 著者が率いる研究チームは追跡調査を実施し、一人一人の子どもの経年変化に注目した。すると、スマホを持ち始めた生徒は成績が下がり、スマホを使わなくなると成績が急回復していることが判明。スマホの使用によって家庭での学習・睡眠時間が短くなることより、それを使用すること自体が直接学力に大きな影響を与えていることも明らかになったという。
 著者は、スマホの使用時間に応じて学力が低くなるのは、脳に何らかの悪影響があったためではないかと推測。(1)学校で獲得した学習の記憶が消えた(2)基本的な学習能力が低下し、学校の授業で学習がうまく成立しなかった-のいずれかの問題が生じている可能性が高いとみる。
 生物学的な理由は突き詰められていないものの、「私としては今すぐに、社会全体で、発達期の子どもたちのスマホ等の使い方について議論を始めなくてはいけないと大きな声で主張したいと思います」。脳機能に関する研究を続ける著者の冷徹な分析は、技術の進歩に安易に依存する現代社会への警告とも言えそうだ。
 集英社03(3230)6080=799円。

河北新報
2018年7月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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