【児童書】『ローラとわたし』

レビュー

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【児童書】『ローラとわたし』

[レビュアー] 木ノ下めぐみ

■最高の親友、本当の関係は…

 静かに遠くを見つめる女の子と、女の子に体をなでられながら、読み手の方へ賢そうな瞳を向ける黒い犬。物憂げな女の子の横顔に、何とも心ひかれる表紙が印象的だ。女の子と愛犬の交流を描いたこの本を、まずは先入観がないまま読んでほしい。

 公園の隣にあるアパートで、ともに暮らすわたしとローラ。独りぼっちで悲しみに沈むローラと出会い、力になろうと決めたわたしは、町に出るのを嫌がるローラに根気よく声をかけ、寄り添い、少しずつ遠くへ散歩できるようになる。

 たまにはケンカもするけれど、どこへ行くのも、何げない時間を過ごすのも、いつも一緒。やがて2人は最高の親友となっていく。

 終盤、ローラの過去が明らかになるにつれ、それまでの女の子と愛犬の、ささやかだけれども、穏やかな日々の意味は一変してしまう。わたしの本当の役割は-。作者の意図を知り、深く考えさせられる。

 物語を読み終えると、表紙の女の子と犬の表情は少し違って見えた。(キアラ・ヴァレンティーナ・セグレ文、パオロ・ドメニコーニ絵、杉本あり訳/徳間書店・1600円+税)

 木ノ下めぐみ

産経新聞
2018年7月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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