『庄野潤三ノート』
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【気になる!】文庫 『庄野潤三ノート』
[レビュアー] 産経新聞社
「第三の新人」の一人である作家、庄野潤三(1921~2009年)はユーモアと温かみのある筆致で日常のはかなさ、かなしさを描いた。生前親交の深かった著者が、そんな奥深い小説の深淵(しんえん)に作品の精読と本人への取材を重ねながら迫っている。
家庭生活の危機を切り詰めた文章でつづる芥川賞受賞作「プールサイド小景」といった小説を支えるのは、ささやかな時や情景を逃さない作家の透明なレンズ。〈すべての文学は人間記録(ヒューマン・ドキュメント)だ〉という作家の言葉が印象的にひかれる。温かく緻密な作家論に導かれ、作品を手に取りたくなる。(阪田寛夫著、講談社文芸文庫・1700円+税)