『国道16号線スタディーズ』 塚田修一、西田善行編著

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国道16号線スタディーズ

『国道16号線スタディーズ』

著者
塚田 修一 [著、編集]/西田 善行 [著、編集]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787234353
発売日
2018/05/25
価格
2,160円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

『国道16号線スタディーズ』 塚田修一、西田善行編著

[レビュアー] 森健(ジャーナリスト)

「日本の平均」の変遷

 総延長341キロ、都心から30~40キロの郊外を結んで走る国道16号線。大規模ショッピングモール、ファミリーレストラン、紳士服チェーン店などロードサイド店が多数並び、「日本の平均」とも言われてきた。

 この16号線について考察したのが本書だ。社会学系研究者の著者らはこの国道を神奈川県横須賀市から相模原市、埼玉県狭山市、春日部市、千葉県木更津市と時計回りに拠点を辿(たど)る中、複数の視点から郊外のありようを評していく。

 トラックドライバーへの取材から運送の実態がわかる章もあれば千葉県八千代市など郊外に開発された霊園について記した章、巨大ショッピングモールなどの登場で沿線の隆盛と衰退が明らかになった春日部市に注目した章もある。

 だが、本書で再三言及され、もっとも重要な視点は軍事都市連絡道としての16号線だろう。今も沿線には軍事拠点が複数ある。横須賀の米海軍基地、相模原の米軍補給廠(しょう)、狭山市の航空自衛隊の入間基地や木更津市の陸上自衛隊の駐屯地。16号線は「日中戦争後に急浮上した軍用道路構想」の産物だったのである。

 「この道路がつなごうとした東京近郊の軍事都市群は首都防衛の役割を担っていた」

 一方で戦後、旧軍や米軍から返された土地も複数ある。そこには小田急線沿線のように巨大な団地群が建設され、戦後人口が増加した「団塊の世代」の「ニューファミリー」を吸収した。そして、増加する若い人口を見込むことで、16号線沿線には巨大な商業地が増えていき、軍事輸送路だった道は産業道路や通勤路へと転じていった。そんな流れに、戦後発展した16号線の原点が見てとれる。

 各論の中にはやや解釈が強すぎかと映るものもあるが、郊外を歴史的に検証する試みは今後も必要だろう。ただし、目下、沿線に迫る課題は高齢化と人口減少だ。次の10年はどうなっているのか。そんな論考も読んでみたくなった。

 ◇つかだ・しゅういち=東京都市大、大妻女子大非常勤講師

 ◇にしだ・よしゆき=法政大、日本大非常勤講師。

 青弓社 2000円

読売新聞
2018年7月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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