<東北の本棚>山の魅力生き生き描く
[レビュアー] 河北新報
横手市の納豆メーカーの社員として、現在、仙台市内の営業所に勤務する著者=太白区在住=が、秋田県内に所在する山々を登り、つづった山行記。
鳥海山のような誰もが知る名峰から、標高300メートル弱のハイキングコースまで、31座を紹介する。
著者の好奇心をくすぐる山は、有名無名を問わない。初めての山、誰もいない山、珍しい名前の山-など、選択基準はユニークだ。
独自の価値判断に従い目標と定めると、まるで近所へ散歩に出掛けるような気軽さで、やぶの中へと単身踏み入っていく。探究心と冒険心、行動力には感心させられる。
「日常のボーダーを振り切る開放感」を経験した大石岳の沢登り。風鞍(くら)の登山では、地形図に登山道の情報を書き写すことを忘れ、山岳遭難の危機を味わった。山の楽しさ、怖さが生き生きと描かれ、ハラハラドキドキさせられる。
山の良き先輩である社会人山岳会「矢留山岳会」(秋田市)のメンバーとのやりとりも楽しい。山に魅了された人々の興味の対象が、どのあたりにあるかがよく分かる。
ばりこは著者のハンドルネーム(インターネット上のあだ名)。「登れば登るほど地元の山は広く深く興味が尽きない」とあとがきで記す。
無明舎出版018(832)5680=1836円。